「青梅マラソン」イメージソング歌う三田りょう、キルギスで大人気…2・17号砲、今年も開会式参加

スポーツ報知
2013年、キルギスを訪問した三田(左から6人目)は女性ダンサーと記念撮影

 ロードレースの祭典、第53回青梅マラソン(報知新聞社など主催)は2月17日に行われる。大会イメージソング「春呼ぶ祭典(まつり)」を歌うのが、歌手の三田りょう(59)。今年も開会式に参加し、歌声でランナーたちを励ます予定だが、その美声は日本から5000キロ以上も離れた中央アジアの国で人々を魅了している。2013年から毎年、キルギス共和国の独立(建国)記念イベントに参加して歌声を披露、友好ソング「風の旅人」は2か月で動画再生100万回を記録した。大病を克服した“青梅の顔”は2国の友好を深めるため、走り続けている。(取材&構成・谷口 隆俊)

 今、日本から西へ約5500キロ離れたキルギスで「有名な日本人は?」と尋ねると、真っ先に「三田りょう」という名前が返ってくるという。国土面積が日本の約半分という旧ソ連の国は、約4割が標高3000メートル超の自然豊かな国。8月31日の独立(建国)記念日には、首都ビシケクのアラトー広場で記念コンサートが盛大に開かれる。三田は6年前から毎年、このイベントに招待され、5万人以上の観衆の前で、両国の友好を示したオリジナル曲を披露している。

 「私の後援者の一人が鹿児島で牧場をやっていて、12年にキルギスの国会議員団が視察に訪れた。その後、『両国の友好ソングを作ってほしい』という要望があったんです」

 三田は、青梅30キロを過去4度走ったこともある市民ランナー(ベストは1994年の2時間27分27秒)。そこで2013年5月、同国東部のイシク・クル湖でのマラソン大会10キロの部に、視察を兼ねて参加した。

 「人の良さにひかれました。ものすごい親日国。こんな言い伝えがある。昔、日本人とキルギス人は兄弟で、魚の好きな人が東に渡って日本人となり、肉の好きな人がこの地にとどまってキルギス人になったという。日本人なら『この言い伝え、知っていますか?』と必ず聞かれますよ」

 どこか親しみやすい国民の人柄と豊かな自然に心を打たれた三田は、民族音楽などCDを買い込んで帰国。恩師で、「天城越え」(石川さゆり)、「北の旅人」(石原裕次郎)など数々の名曲を手掛けた作曲家・弦哲也氏に相談し、友好ソング「風の旅人」を完成させた。

 「5万人を前に歌うなんて初めて。人の波がうねって見えた。あんな経験は初めて。気持ち悪くなりそうだけど、気持ちよかった」。大統領公邸に宿泊するなど“国賓級”のもてなしを受け、当時のアタムバエフ大統領に「歌ってくれてありがとう」と感謝された。

 反響は予想以上だった。歌に感動したキルギス人女性が動画投稿サイトに三田の歌唱の様子をアップ。100万回以上も再生された。「キルギスの方からは『歌詞は分からないけど、とても気持ちいい歌だ』という言葉もいただきました」

 15年には7万人が集まり、三田は「風の旅人キルギス語バージョン」を披露した。「7万人はもう、ハンパない。あの舞台だけは一生、忘れられない。人の波があっちでうねって、こっちでもうねる(笑い)」

 同曲のプロモーションアニメも制作され、米ロサンゼルスでのフィルムフェスティバルで審査員特別賞を受賞した。「このアニメを見たキルギス人男性が海外に嫁ぐ娘を思って、泣いて感謝してくれました。『ありがとう』『最高』というコメントもうれしかった」

 城西大時代は応援団に所属した、気骨ある男。弦氏に師事し、87年に歌手デビュー。91年には青梅マラソンが25回大会を記念してイメージソングを制作。青梅に近いあきる野市出身で、ランナーでもある三田が歌うことになった。だが、公私ともに順調だった08年秋、悪性リンパ腫を発症した。

 「体のいたる所に腫瘍ができて…。おなかの中は、ブドウの房みたいな腫瘍がたくさんできていた。自覚症状はなかったんですけど…」

 抗がん剤治療は想像を絶する苦しさだった。薬の副作用で、吐き気やだるさで常に“船酔い”状態。吐き気を抑えるために点滴を打ち、投薬、また投薬…。「頑張ろう」と励まし合った闘病仲間の悲報が伝わると、死の恐怖におびえた。だが、「必ず治ってみせる」と強い意志で病魔と闘い、2年後、復帰を果たした。「お医者さんも驚き、私の復帰は同じ病気と闘う人の励みになると言ってくださった」

 遠い異国で“ヒーロー”になった男は、これからも日本とキルギスとの友好関係促進に尽力していく。「『継続は力』ですから」。今、三田が歌っている「命」をテーマにした「天道虫」という曲は、合唱曲として、キルギスの日本人学校の課題曲になっている。

 ◆東京羽村市8・18友好コンサート

 キルギスではサッカーなどが人気で、昨年11月に森保一監督率いる日本と親善試合を戦った(0●4)ことは記憶に新しい。レスリングや柔道など格闘系スポーツでは、昨夏のジャカルタ・アジア大会でメダルを獲得するなどレベルアップ。柔道は、昨秋のグランドスラム大阪の大会前、男子代表が東京・羽村市で事前キャンプを実施。その縁もあり、今年8月18日に同市で友好コンサートが開かれる予定で、羽村市―キルギス共和国友好親善ボランティア大使に任命されている三田も参加する。

 ◆病院で歌い勇気 

 三田は、多くの人に悪性リンパ腫を知ってもらい、患者の力になろうという「ライムグリーンリボンキャンペーン」にも積極的に協力。病院でのコンサートなど歌を通しての活動が中心で、17年には、音楽で健康促進を推し進める音楽健康福祉士の資格も取得した。三田のコンサート会場などで販売される「太長寿のど飴」(株式会社TI、本社・静岡)にはゲルマニウム、プロポリスなどが配合され、のどをまろやかにする効果があり、同キャンペーンにも賛同している。

 ◆キルギス共和国 

 面積は19万8500平方キロで日本の約半分。人口は約600万人(2017年=国連人口基金)。首都はビシケク。元首はソオロンバイ・ジェエンベコフ大統領。1991年、ソビエト連邦から独立。主な産業は農業・畜産・鉱業(金採掘)。ソ連時代は保養地としても知られ、宇宙飛行士ガガーリンも晩年に過ごした。ボクシング元世界王者ビタリとウラジミールのクリチコ兄弟はベロヴォーツク村出身。

 ◆三田 りょう(みた・りょう)本名・岡睦夫。1959年10月12日、東京・あきる野市生まれ。59歳。城西大卒。作曲家・弦哲也氏に師事し、87年に歌手デビュー。2000、06年には日本有線大賞有線音楽賞を受賞した。

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