五輪4大会連続出場の谷井孝行、最後まで「全力で」競歩人生22年に幕

スポーツ報知
記者会見で和やかな笑顔を見せる谷井(左)(右は松永大介)

◆日本陸上競技選手権 男女20キロ競歩(17日、神戸市・六甲アイランド甲南大学周辺コース)

 日本陸上競技選手権の男女20キロ競歩が17日、神戸市・六甲アイランド甲南大学周辺コースで行われる。五輪に4大会連続で出場した同種目の第一人者で、富山県出身の谷井孝行(36)=自衛隊体育学校=は今大会限りで引退する。16日、同市内で会見し、最後まで「全力ウォーク」を宣言。2015年世界陸上北京大会銅メダルのベテランが、感謝の気持ちを込めて最終レースに挑む。

 引退レースを翌日に控え、谷井は晴れやかな表情を浮かべた。昨年11月は宮崎、12月はナショナルトレーニングセンター、今年1月にはオーストラリアで精力的に強化合宿を続けてきた。50キロの日本代表選手らと一緒に練習し、1日に40キロの距離をこなすことも。「故障も不調もなく、たまに自分が引退するのか、と忘れてしまうくらい。1年間、戦える体作りをしてきました」と報道陣の笑いを誘う。心身ともに万全のコンディションで現役最後のレースに挑む。

 引退か、現役続行か。迷い抜いた末の決断だった。16年のリオデジャネイロ五輪では50キロに出場し、序盤は先頭集団に入っていたが、20キロ過ぎから遅れ始めて14位となった。「リオでは全てをかけ、全力で挑んでメダルが取れなかった。東京を目指すためにはエネルギーが必要」と、この2年間は競技を続けながら、自分の心の中を見つめ続けた。

 しかし、強いモチベーションが起きることはなかった。「次の五輪に向け、気持ちが入りきれなかった。いつまでも中途半端に続けたくないし、いつかはやめないといけない」。昨年10月の全日本競歩50キロ高畠大会後に引退を表明。今後は自衛隊体育学校でコーチに就任し、東京五輪に向けて後進を育てることを決断した。

 高校1年から競技を始め、今年で22年目。「競歩は生活の一部。練習しない状況が想像できない」と戸惑いもあったが、しっかりと気持ちの整理も付いた。レース当日は両親や家族が駆けつけて応援する予定だ。「娘も8歳になって、感じるものはあると思う。今まで頑張ってきた姿を見せ、全力でゴールテープを切りたい」と谷井。支えてくれた家族のためにも、有終のラストウォークを飾る。(中田 康博)

 ◆谷井 孝行(たにい・たかゆき)1983年2月14日、滑川市生まれ。36歳。滑川中では野球部、高岡向陵高1年から競歩を始めた。2年の時に総体優勝と世界ユース3位。日大4年でアテネ五輪に出場し、20キロ競歩で15位。卒業後は佐川急便に入社、14年に自衛隊体育学校に移籍。北京、ロンドン、リオ五輪にも出場。167センチ、57キロ。血液型B。

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