大野将平「唯一命のやりとりのできる」先輩・海老沼匡倒してV 

スポーツ報知

◆柔道グランドスラム デュッセルドルフ大会第2日 男子73キロ級決勝 ○大野将平(優勢勝ち)海老沼匡●(23日、ドイツ・デュッセルドルフ)

 男女4階級が行われ、男子73キロ級は2016年リオ五輪金メダリストの大野将平(27)=旭化成=が制した。日本勢同士の決勝で、66キロ級で五輪2大会連続銅メダルの海老沼匡(29)=パーク24=に優勢勝ちした。ともに昨年の世界選手権で銀メダルを獲得した男子81キロ級の藤原崇太郎(20)=日体大=、女子63キロ級の田代未来(24)=コマツ=も優勝した。今大会は世界選手権(8~9月、東京)代表選考会の一つを兼ねる。24日の最終日は女子78キロ級で昨年の世界女王・浜田尚里(自衛隊)が1回戦でロシア選手に一本負けする波乱があった。

 大野が今年の初戦で揺るぎない強さを見せた。3回戦から準決勝までの3試合は一本勝ち。だが「結果だけを見れば『良かった』となるだろうけど、どうしても内容に目がいく。もやもやするような、我慢の一日だった」と満足はない。頂点に立っても「自分の柔道を貫いて勝っていく難しさを、2019年の初戦で痛感した」と厳しい表情を崩さなかった。

 ただ、日本人同士の戦いとなった決勝には格別の思いがあった。柔道私塾「講道学舎」先輩で、尊敬する海老沼との対戦に闘争心をかき立てられた。「互いに『矛』対『矛』だと思っている。唯一、命のやりとりのできる相手」。敬意を抱いてぶつかり、試合中盤にタイミングのいい浮き技で崩して技ありを奪った。

 男子73キロ級は2年連続で橋本壮市(27)=パーク24=が世界選手権に出場して金と銀メダルを獲得し、直近のグランドスラム(GS)パリ大会も制するなど猛アピールしている。一方で、大野はリオ五輪以降は天理大大学院の修士論文を優先。リオ五輪王者として泰然自若として独自の道を歩み、東京五輪に向けて着実に仕上げてきている。

 両者のハイレベルな争いで、今年の世界選手権では1階級2人の派遣も考えられるが、求める水準が高いからこそ、結果に一喜一憂はしていない。「自国開催で世界選手権や五輪があるのは、すごくモチベーションになる。キャリアも後半に近づいている。日本柔道の中でも強く名を刻めるように19年、20年を過ごしていきたい」。そんな姿に、全日本男子の井上康生監督(40)も「大野は調子が良かったわけではないが、海老沼を退けた。本物の力を持っている」と絶賛した。第一人者が、ここから真価を発揮していく。

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