スノボと二刀流の平野歩夢、スケボーでいきなり3位 東京五輪へテイクオフ

スポーツ報知
3位に入賞した平野歩夢のトリック(カメラ・矢口 亨)

◆スケートボード 日本オープン・パーク選手権(16日、神奈川・藤沢市鵠沼海浜公園)

 五輪スノーボード男子ハーフパイプで2大会連続銀メダルの平野歩夢(20)=木下グループ=が、日本代表の強化候補選考会を兼ねた大会で、8人で争う決勝で66・87点をマークして3位に入り、2020年東京五輪出場へのはじめの一歩を踏み出した。夏冬両方の五輪でメダルを獲得すれば、日本人としては初。前人未到の偉業に、天才ボーダーが挑む。

 湘南の風を受け、平野が高く舞った。地面が雪でも、コンクリートでも滞空時間に変わりはない。コースの縁から、1メートル以上も宙に浮いた。抜群のバランス感覚で、次々と技を決めた。「スケボーは、スノーボードよりも楽しむのがメイン。まさか3位になれるとは」。40秒×3本の決勝で、2本目にベストスコアの66・87点をマーク。やや照れくさそうに振り返った。

 二刀流がベールを脱いだ。1月に右手を骨折した影響もあり、本格的な準備期間は1、2か月。それでも「10年くらい出ていなかった」というスケボーの大会で“表彰台”に食い込んだ。5月の日本選手権(新潟・村上市)との合計ポイントで争う強化候補選手の枠、東京五輪の代表枠はいずれも「3」。「これが五輪に近づくきっかけになっていけばいい」。日本人5人目の夏冬出場へ踏み出した。

 「正解もないし、期待に応えるのは簡単ではない」。そんなストイックな20歳の挑戦に、注目度は上がった。主催者発表で1150人が来場。会場横の丘にも、多くのファンが陣取った。45社130人の報道陣の中には、オリンピックチャンネルのクルーの姿も。「スケボーでここまでの人たちが集まって盛り上がるのはなかなかない」。10台以上のテレビカメラが追いかけ、ワイドショーまで参戦した。

 スケボー歴は4歳の頃からで、実はスノーボードよりも長い。この大会を主催した日本スケートボーディング連盟の副代表理事を務める父の英功さん(47)が造った故郷・新潟県村上市のコースで慣れ親しんできた。見守った父は「全て未知の中の挑戦。ハッピーエンドじゃないことも覚悟して臨んでいたと思う。上出来だった」と、目を細めた。

 パーク男子はまだ絶対的と呼べる存在はおらず、群雄割拠。日本代表の西川隆監督(53)は「まだまだいけるんじゃないか。縦の動きはうまい。横の速さを磨けば、世界のトップにいける」と潜在能力にうなった。「僕にとってはチャンス。不可能を可能にできる競技でもある。二刀流で、夢を持ってチャレンジしてくれる子供たちが増えてくれれば」。夏冬メダルなら日本初。“世界のアユム”の辞書に、不可能の文字はない。(太田 倫)

 ◆平野 歩夢(ひらの・あゆむ)1998年11月29日、新潟・村上市生まれ。20歳。4歳の時、3つ年上の兄・英樹(えいじゅ)さんの影響でスケートボードを始め、その半年後からスノーボードを始めた。ソチ、平昌五輪のスノーボード・ハーフパイプで2大会連続の銀メダル。新潟・開志国際高を卒業後、日大スポーツ科学部競技スポーツ学科に進学し、現在は2年生。大好物はつぶ貝。160センチ、50キロ。

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