【箱根への道】灼熱への道、攻略せよ…東京五輪有力候補に箱根出身者ズラリ

2018年8月4日12時0分  スポーツ報知
  •  原監督が「暑さに抜群に強い」と期待する神野大地と下田裕太(右)
  • 亜大の佐藤監督
  • 07年大阪世界陸上の酷暑マラソンで惨敗した苦い経験を持つ久保田満氏(右)

 2020年東京五輪まで2年を切った。ここ2年の“東京で一番暑い日”である8月9日に行われるのが男子マラソン(女子は2日)。昨季創設されたMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ)シリーズでは、男子13人が来年9月15日の代表選考レースの出場権を獲得している。「箱根から世界へ」の理念の下、95回を迎えようとする箱根駅伝は役割を果たせているだろうか。灼熱(しゃくねつ)の東京決戦の怖さと攻略法を探った。

 ◆青学大・原監督「高温多湿に強い選手を」

 男子マラソンが行われる8月9日の都内の平均気温は16年が31・9度、17年が30・0度と、それぞれの年で最も高くなっている。史上3校目の箱根5連覇を目指す青学大・原晋監督(51)は「東京五輪のマラソンは、これまでの夏マラソンと別次元の暑さの中で行われる。『新種目』と言っても過言ではない」と警鐘を鳴らす。

 最大の敵は高温に加え、日本の夏特有の湿度の高さだ。汗の気化を阻害し、体温が下がりづらくなると熱中症の危険性が高まる。体内の水分量が2%低下することでパフォーマンスは20%落ちると言われている。「メダル獲得のためには、高温多湿に強い選手を代表に選ばなければならない。青学大OBの中では、まだMGC出場権を獲得していないが、神野大地と下田裕太(22、GMOアスリーツ)が暑さに抜群に強い。期待している」と3代目山の神に加え、16年東京マラソンで10代日本最高となる2時間11分34秒をたたき出した実業団ルーキーの名前を挙げた。

 ◆亜大・佐藤監督「疲労完全に抜いて臨め」

 夏のマラソンで快走した亜大・佐藤信之監督(45)も不安を隠せない。中大4年時に10区区間賞を獲得するなど4年連続で箱根路を走ったエースは旭化成時代の99年に「スペインのフライパン」と呼ばれるセビリアで開催された世界陸上男子マラソンで銅メダル。「夜の7時スタートで30度を超えていたが、レースが進むにつれて気温が下がったので安心感があった」と振り返る一方「東京五輪は全くの逆で朝7時スタート。どこまで気温が上がってしまうのだろうという恐怖感との戦いになるのでは」と精神面のダメージを危惧した。攻略ポイントを「レース前は疲労を完全に抜くことが重要。暑さ対策として暑い中で行った距離走は3回ほどで、直前は北海道の釧路で調整した」と話した。

 箱根駅伝創設から100年の節目に行われる2度目の東京五輪。代表候補はほとんどが元箱根ランナーだ。「箱根から世界へ」の理念を体現し、メダルを獲得する選手が待望される。(太田 涼)

 ◆創価大・久保田コーチ「同時期&時刻に試走を」

 酷暑のマラソンで失敗した男だからこそ知る、成功へのヒントがある。創価大駅伝部の久保田満コーチ(36)は東洋大3、4年時に箱根1区を務め、卒業後は名門・旭化成へ。07年に大阪世界陸上マラソンで56位と惨敗、2時間59分40秒も要した。別の日に行われた女子の優勝タイムより29分3秒も遅かった。

 久保田コーチは同レースで5位と健闘した尾方剛(現広島経大監督)の戦略が印象に残っているという。「ウォーミングアップで全く走らなかった。『必ずスローペースで始まるから、最初の5キロがウォーミングアップ』と話していた。東京五輪もスローペースになる可能性が大きいが、序盤は下っているのでハイペースになる可能性もある。ハイペースで始まる場合、ある程度のウォーミングアップは必要。その辺の見極めが大事になるでしょう」

 試走の重要性も説いた。「レース後、真夏の大阪のコースを試走すべきだったと痛感した。東京五輪に出るだけではなく、メダルを狙う選手は同じ時期の同じ時間に試走をした方がいい。どの地点が一番暑いか実体験できる。来年の9月にはMGCがあるので、質の高い試走をするチャンスはこの夏しかない」。東京五輪まで2年。時間はあるようで、ない。(竹内 達朗)

 ◆箱根路から五輪メダルは36年の南昇竜だけ

 箱根駅伝は1920年に「世界に通用するランナーを育成する」という理念を掲げ、創設された。これまで箱根出身の五輪代表選手は、冬季の28年サンモリッツ、日本が出場をボイコットした80年モスクワを含め延べ92人。メダルを獲得したのは36年ベルリンでマラソン銅の南昇竜だけ。朝鮮半島出身の南は明大でベルリン五輪前後の35~37年に箱根駅伝に出場した。

 世界陸上マラソンでは箱根出身の3選手がメダルを獲得している。91年東京金の谷口浩美は、日体大で81~83年に3年連続で6区区間賞。99年セビリア銅の佐藤信之は、中大で92~95年に4年連続出場。2005年ヘルシンキ銅の尾方剛は、山梨学院大で94年大会で優勝のゴールテープを切り、自身も区間賞に輝いた。

 ◆MGC確定13人中10人が箱根経験者

 MGC出場権を獲得している13人のうち、10人が箱根駅伝経験者だ。大学別では2人ずつを出した東海大と東洋大がトップ。4人は箱根駅伝での成績も申し分なく、特に16年ぶりに日本記録を更新した設楽悠太はハーフマラソンでも日本最速を誇る“絶対王者”だ。東洋大の酒井俊幸監督(42)は、「悠太も(双子の兄の)啓太も暑さへの耐性はピカイチ」と、東京五輪でも期待。2時間13分30秒以内の記録を持つ選手も、9割以上が箱根路を走っている。

 ◆MGCレース 東京五輪代表3枠のうち2枠を一発勝負で争うMGCレース(19年9月15日)へ出場する方法は〈1〉MGCシリーズで基準をクリアする、〈2〉ワイルドカード基準をクリアする、の2通りある。〈1〉は国内指定競技会(男子5大会)で大会ごとに定められた順位とタイムで走ることで出場権を得る。〈2〉は世界陸連公認の競技会で設定タイム(男子は2時間8分30秒以内、もしくは上位2レースの平均が2時間11分以内)をクリアする必要がある。

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