【箱根への道】日体大、80歳名伯楽がチーム引っ張る 渡辺総監督「生活が何よりも基本」

2018年10月13日12時0分  スポーツ報知
  • 1日のノルマ8000歩をクリアした万歩計を持つ日体大・渡辺公二総監督
  • 9位に終わった日体大。6区の林田元輝がゴールに向かう

 8日に行われた学生3大駅伝の初戦、出雲駅伝は史上初2度目の3冠を狙う青学大が2年ぶり4度目の優勝を飾った。パワハラ問題で渡辺正昭・前監督(55)が解任された日体大は渡辺公二総監督(80)のもと、新体制の初陣で9位。1日付で就任して1週間。監督としてだけでなく選手としても走れなかった大舞台を終えた渡辺総監督に、これまでとこれからを聞いた。

 「いやぁ、やっぱり駅伝は難しいですねぇ」。渡辺総監督は9位に終わった出雲駅伝を振り返り、課題を挙げた。「1、2区で出遅れたらあかんのです。あそこで耐えきれたら5位以内も見えたかもしれない。私も、他校の戦力を把握しきれていなかったですね」。安定感のある池田耀平(2年)がスパート勝負で後れを取り1区14位。2区以降は一度も順位を落とすことなくレースを進めたが、目標の3位には届かなかった。

 渡辺総監督は1956年に日体大へ入学したが同年5月、風呂場でカミソリを足元に落としてアキレス腱付け根を大けが。走る道を諦めざるを得なかったという。60年に卒業すると福島商(現・履正社)に体育教員として赴任。陸上部ではなく、野球部監督を2年間務めた。「当時は強化する前でしたから弱かったですよ。毎年1回戦負けでした。一度も勝ってないんじゃないかなあ」。夏の甲子園2度優勝の大体大浪商など強豪を相手に、専門外の野球では太刀打ちできなかった。

 その後、社(やしろ)を経て70年に西脇工駅伝部監督に。喫煙やけんかを繰り返す学校の風紀から見直し、選手を鍛え上げていった。「最初は大変でしたけどね。でも、生活が何よりも基本ですから」。当たり前のことを当たり前にこなす人間力あっての駅伝。全国高校駅伝男子で監督最多8度の優勝を誇る名伯楽の原点だ。

 2008年、38年間指導した西脇工から離れたが、13年には教え子だった別府健至元監督(52)を支え、特別強化委員長として日体大で30年ぶりの箱根駅伝優勝に貢献。その後は夏合宿に帯同する程度だった。「短い期間ですし、選手たちの表面しか見えません。今は走りの特長や心を把握しようとしている。真面目な学生が多いことしか分かっていませんね」。現在は寮で選手と寝食を共にしており、5時起床の朝練から1日が始まる。

 来年3月までの短い任期の中、残す駅伝は2つ。昨年の箱根メンバーから5人が卒業し、日本学生対校1万メートル7位の山口和也(3年)や前回の箱根6区を走った廻谷賢(3年)らが主力を担う。練習メニューや区間エントリーは学生主体で考案し、渡辺総監督らスタッフはサポートに徹する。「距離が延びるにつれ、もっといい勝負ができる。まずは全日本でどれだけ立て直せるか」。名将の本領発揮は、まだまだこれからだ。(太田 涼)

  太田記者、朝ランで遭遇
 「いい走りしておるね。どこの大学の選手だい?」。出雲駅伝前日(7日)の午前6時20分。順大4年時以来、5年ぶりに訪れた地を走ってみようとランニングしていたところ、渡辺総監督に呼び止められた。まさかの初対面だ。学生ではなく新聞記者であること、もともと長距離ランナーだったことを話すと「順大は今、誰が監督されているんですか?」と逆取材を受けた。思わぬ形で総監督に就いたとあっては、自分たちのことで本当に精いっぱいなのだろうと感じた。
 首からはいつも、奥さまからもらった歩数計をぶら下げている。1日8000歩がノルマだ。「80歳ですと、そのくらいがちょうどいいそうです。お酒も6年前にやめましたしね」。実際、取材した3日間は日課である朝の散歩だけで7000歩を超えていた。基礎基本、特に生活を重視する。厳しく妥協を知らない精神力が箱根につながるはずだ。

箱根駅伝

箱根駅伝 2018

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