御嶽海、初V王手…優勝制度導入後で長野県勢は初

スポーツ報知
豪栄道(右)を送り出しで破った御嶽海(カメラ・能登谷 博明)

◆大相撲名古屋場所13日目(20日・ドルフィンズアリーナ)

 1敗の関脇・御嶽海が初優勝に王手をかけた。大関・豪栄道を送り出して12勝目。長野県勢初Vにあと1勝とした。

 14日目に前頭13枚目・栃煌山を下すか、敗れても3敗の前頭9枚目・豊山、同13枚目・朝乃山がともに負ければ、2015年夏場所の照ノ富士以来26例目の関脇Vが決まる。優勝の可能性が残るのは御嶽海、豊山、朝乃山だけで、豪栄道はV逸。3横綱1大関が休場した“荒れる名古屋”で、ニューヒーローが誕生しようとしている。

 考えるよりも先に体が反応した。2度目で成立した立ち合い。豪栄道に前みつを引かれた瞬間、体を開いて左上手で振り、最後は後ろ向きにした大関の背中を押して勝負を決めた。「気持ちだけはしっかり余裕を持っていた。相手がしっかり見えたのではまりました」。場所前の稽古では4勝13敗だった強敵を撃破。極限の緊張の中で積み上げた白星の自信が、初優勝への扉をこじ開けた。

 「結果が全てなんで。勝ちは勝ちなんで。しっかり(気持ちを)収めて。まだ終わってない」。今場所初黒星を喫した前日12日目は支度部屋で報道陣に背を向けたが、この日は正面を向いて口を開いた。「いっぱいいっぱいでした」と言いながらも、今場所初めて上位を倒した事実を自信に変えた。

 場所前、相撲協会の企画で、七夕の短冊に「イケメンになる」と書いた。ルックスを気にしていると冷やかされたが、真意は違う。敗れた12日目、最後の仕切り直前にNHKの中継で映されたのは、気合を入れた高安の“決めポーズ”。不満だった。この日の朝稽古後、「かっこいいと思うものを見たいでしょ。男たるもの、そういうもの。そうでなかったら短冊は単なる受け狙い」。この日は37本の懸賞を抱える姿が映った。取組後も、「自分の映像? 見ると思いますよ。かっこいい自分? いるでしょ、120%」と、言葉を強めた。

 長野県出身力士の優勝は、1909年の優勝制度導入後では初。それ以前では江戸時代、326戦して10回しか負けなかった伝説の力士・雷電が最後に優勝に相当する成績を残して以来208年ぶり。壮大な快挙を目前に、地元の長野・上松町では、この日から公民館でパブリックビューイングを開始した。快挙を祝う横断幕も「間に合うように」と、関係者が用意しているという。周囲の盛り上がりは伝わるが、優勝への意識は「全然ない!」。最後まで気持ちは緩めない。(網野 大一郎)

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