稀勢の里、わずか2秒9で押し出され2敗目 またしても全敗力士に白星献上

スポーツ報知
玉鷲(左)に押し出され、2敗目を喫した稀勢の里

◆大相撲秋場所8日目 ○玉鷲(押し出し)稀勢の里●(16日・両国国技館)

 8場所連続休場からの復活を目指す横綱・稀勢の里が、今場所最短の2秒9で完敗した。場所前に所属する二所ノ関一門の連合稽古で9勝1敗と圧倒していた小結・玉鷲に今場所初白星を献上。残り7日は2横綱、2大関、両関脇ら難敵が待ち受け、横綱審議委員会が“提示”する最低10勝到達に不安が広がった。

 再起への波になかなか乗れない。ため息をつく暇もなく、稀勢の里が土俵を割った。初日から7連敗中だった玉鷲と2度目の立ち合い。相手の左おっつけと右のど輪で上体を起こされ、ズルズルと後退。7日目は今場所自身最長(58秒9)の末に激闘で勝ったのとは一転、2秒9の最短相撲で黒星ターンとなった。

 迷いからか、踏み込んだ足は、これまでの右ではなく左。得意の左差しを狙う際の“セオリー”を自ら破ってしまった。今月3日の二所ノ関一門の連合稽古で胸を合わせていた玉鷲も、「(脇下に手を入れて押す)左ハズを狙っていた。(稽古では1勝9敗と)負けたけどいい研究になっていた」と、手ぐすね引いて待っていた。

 6日目の千代大龍に続き、またも全敗力士に初白星を与えてしまった。沈黙の支度部屋では、満面の笑みでインタビューを受ける玉鷲の映像が流された。稀勢の里はテレビ画面を一度も見ることなく何度も額の汗を拭い、報道陣の質問には無言を貫いた。

 中日の時点で痛い2敗目。8場所連続休場で15日間皆勤は1年半も遠ざかっており、後半戦へスタミナ面も心配される。阿武松(おうのまつ)審判長(元関脇・益荒雄)は、「何もできなかった。本場所は長丁場なだけに大変だ。これまで最高の立ち合いで相手を食い止めてきたのに、今日は立ち合いがダメだった」と指摘。師匠・田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)は「(立ち合いは)頭でいっているのに、よけている」と、微妙な勝負勘のズレを指摘した。

 9日目は結びで大関・栃ノ心戦が組まれた。朝稽古は東京・江戸川区の部屋で初日から8日連続の非公開。ブレずに地道な調整が続く。いよいよ上位陣との厳しい戦いが始まる。進退場所で連敗だけは許されない。(小沼 春彦)

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