稀勢の里、10勝&800勝王手!20日横綱昇進後白鵬と初対決

スポーツ報知
御嶽海(右)を寄り切りで下した稀勢の里(カメラ・能登谷 博明)

◆大相撲秋場所12日目 ○稀勢の里(寄り切り)御嶽海●(20日・両国国技館)

 8場所連続休場からの復活を目指す横綱・稀勢の里(32)=田子ノ浦=は関脇・御嶽海(25)=出羽海=を寄り切って9勝目。大関・栃ノ心(30)=春日野=をすくい投げで下した横綱・白鵬(33)=宮城野=は全勝を守り、幕内1000勝にあと2勝とした。13日目に組まれた2人の対決は稀勢の里が大関時代の2017年初場所以来10場所ぶり。過去に名勝負を演じてきた両雄が横綱同士として初めて相まみえることになった。

 結びの横綱相撲が心地よかった。国技館の視線を独占した稀勢の里が、大関候補・御嶽海の挑戦をはねのけた。立ち合いで右から張って左差し。相手に右上手を引かれて劣勢になりかけたが、即座に左からのすくい投げで振りほどき、最後は必勝パターンの左四つで寄り切った。

 今場所3度目の連敗危機を回避して9勝目。進退問題を忘れさせるほど落ち着いた取り口にも「まあ、そうですね」と静かに息を整えた。幕内通算713勝とし、日馬富士(元横綱)を抜いて歴代単独6位に浮上した。

 13日目には、いよいよ無敗の白鵬と胸を合わせる。昨年春場所で横綱に昇進してからは初対決。過去の幕内対戦成績は稀勢の里の16勝43敗と負け越してはいるものの、日馬富士(20勝)に次ぐ白星を奪っている。大一番への意気込みを問われても和製横綱は無言を貫いた。

 一方の白鵬は、稀勢の里の勝負を見届けることなく支度部屋へと引き揚げ、「楽しみだね、明日は特別だね」と言い残した。

 同じ横綱でも日本、モンゴル出身として比較されてきた。番付最高位で反目し合う印象もあるが実は逆だ。綱の重圧を知る者同士、共感し切磋琢磨(せっさたくま)してきた。ある時、白鵬がいた銀座のクラブに稀勢の里が入ってきたことがあった。同席し、しきりに酒を勧めてきた後輩に「俺のことをつぶそうとする。でも負けられない、横綱として」と互いに酌み交わしたという。白鵬は、そのライバルを稀勢の里とは呼ばず、「我らが第72代(横綱)」と敬意を込めて表現する。今場所前には、「ライバルか、仲間か?」と問われると「両方でしょう」と答えている。

 次の1勝は、稀勢の里の相撲人生でも大きな意味を持つ。通算800勝に到達するだけでなく、横綱審議委員会が5日目の本場所総見で意見交換した際、進退問題クリアの条件として“提示”した10勝にも手が届く。髪を結う間は「フ~ッ」と大きく息を吐き、正面をじっと見つめた。「まあ、しっかり」と泰然自若。口数は少なくとも、闘志はみなぎっていた。(小沼 春彦)

 ◆稀勢の里と白鵬の因縁

 ▼初対決 互いに幕下時代の03年秋場所13日目、切り返しで白鵬が勝利。「カメラマンが大勢いて『(注目は)俺か』と思ったら違った」と白鵬。

 ▼連勝止める 10年九州場所2日目に結びで対戦。当時、前頭筆頭の稀勢の里が寄り切って横綱・白鵬の連勝を歴代2位タイの63で止める。

 ▼全勝対決 13年夏場所14日目に13戦全勝同士で対戦。すくい投げで横綱・白鵬が大関・稀勢の里に勝利。16年夏場所13日目は12戦全勝同士で激突して綱取りに挑む稀勢の里を粉砕。「何かが足りない。横綱・白鵬を倒すには日ごろの行いもよくなければね」と白鵬。

 ▼壁を破る 17年初場所千秋楽。初優勝を決めて横綱昇進が決定的な稀勢の里が土俵際のすくい投げで最大のライバル、白鵬を逆転。対戦成績は稀勢の里の16勝44敗(幕内では16勝43敗)。

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