白鵬、稀勢の里を一蹴 41度目V&史上初幕内1000勝に“ダブル王手”

スポーツ報知
堪える稀勢の里(奥)を土俵際まで押し込み、寄り切りで破った白鵬(カメラ・関口 俊明)

◆大相撲秋場所13日目 ○白鵬(寄り切り)稀勢の里●(21日・両国国技館)

 横綱・白鵬(33)=宮城野=が初日から13連勝を飾り、前人未到の幕内1000勝と41度目の優勝に“ダブル王手”をかけた。稀勢の里(32)=田子ノ浦=が新横綱で迎えた2017年春場所以後では初の両雄対決が実現。白鵬が万全の寄り切りで、8場所連続休場からの復活を目指すライバルとの10場所ぶりの対戦を制した。稀勢の里は4敗目で横綱審議委員会が“提示”した10勝のノルマは先送りに。14日目に白鵬が大関・豪栄道(32)=境川=を下せば、5場所ぶり、横綱・大鵬の12年を抜く初優勝から歴代1位となる13年連続の優勝が決まる。

 張りつめた空気が一気に緩んだ。ファンが待ち望んでいた一番は白鵬の一方的な内容の完勝。満員札止めの国技館にはため息が響いた。だが当事者の思いは異なった。相手の苦悩を知るだけに、「ここまでよく戦ったと思いますよ」。稀勢の里を白房下に寄り切った先輩横綱は2度うなずき、右手を宿敵の背中に回した。幕内60度目の両雄対決を制した直後“ねぎらい”に近い感情がわき上がっていた。

 前日の取組後「楽しみだ」と白鵬は言った。横綱昇進12年目。孤独に責任と向き合ってきた男が、嫌っていた言葉を口にして臨んだ決戦はあっけなく終わった。右で張って左を差すと一気の寄り。最後はもろ差しになって棒立ちの相手を土俵の外に運び出した。「あの形で前回は負けていた。もう一回チャレンジした感じです。いい緊張感」。土俵際で逆転された同じ左差しの形から雪辱。稀勢の里戦の連敗も3で止めた。

 名古屋場所前、出稽古先の九重部屋で1年4か月ぶりに胸を合わせた。忖度(そんたく)なしの激しいぶつかり合い。「目が覚めた」と稀勢の里は翌日も押しかける形で宮城野部屋に足を運んだ。急ピッチで仕上げようとする姿を見て白鵬は休場を勧めたという。「四股、すり足の数も少なかった。『焦るな』と言ったみたいだよ」と宮城野親方(元幕内・竹葉山)。万全の状態に戻す勇気をうながした先に、この日の決戦が待っていた。

 「気持ち良かった」と綱を張る“同志”を破って幕内1000勝と今年初の賜杯にリーチをかけた。「お互い休場明け。(稀勢の里が休んで)私が引っ張ったような数場所があった。お客さんも分かっている、というか感じたと思います」と熱狂的な声援を集めた一番を振り返った白鵬。仲間の帰還に立ち会った。残り2日は自分の記録達成に意識を集める。(網野 大一郎)

 ◆稀勢の里、無言ため息10勝足踏み

 白鵬にもろ差しを許して完敗した。左脇を固めて相手の右差しに抵抗し、苦しまぎれの突き落としを試みるも不発。土俵下で、ため息まじりにうつむいた。支度部屋では、久々の白鵬戦への感想を求められても、何もできなかったショックからか目を閉じて無言のまま。横綱審議委員会が進退問題クリアの条件として“提示”する10勝を前に、歯がゆい足踏みとなった。

 八角理事長(元横綱・北勝海)

 「白鵬は相撲を取らせなかった。左差しも許さず封じた。優勝争いしている時の集中力がある。優勝争いしている横綱とそうじゃない横綱の気力の差も。稀勢の里はただ左を差すだけではダメ。自分から攻めていない。突き落としも大したことはなく、あれで体勢を悪くした。体調を整えることだ。今場所は万全ではないと思った」

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