白鵬、史上初1000勝&13年連続V…“悪役”のレッテル乗り越え

スポーツ報知
豪栄道(右)を上手投げで下した白鵬

◆大相撲秋場所14日目 ○白鵬(上手投げ)豪栄道●(22日・両国国技館)

 横綱・白鵬が前人未到の幕内1000勝と5場所ぶり41度目の優勝を同時に達成した。2敗で追う大関・豪栄道を上手投げで下して14戦全勝で快挙達成。大関時代の2006年夏場所の初優勝から13年連続優勝となり、歴代1位だった昭和の大横綱・大鵬の12年連続を47年ぶりに更新した。稀勢の里は鶴竜との横綱対決を寄り切りで制し2017年初場所後の横綱昇進後では初の横綱戦白星。横綱審議委員会が“提示”していた進退問題回避の最低ライン、2ケタ勝利に届いた。

 じっくりと達成感にひたった。優勝と幕内1000勝を同時に成し遂げ、花束を受けとりファンと手を合わせて向かったインタビュールームで白鵬は大きく息を吐いた。「ホッとしています。こんな上出来になるとは思わなかった。最高に気持ち良いです」。勝つことに慣れている最強横綱も歴史を作った白星は格別。引き揚げる際も「両手に花だね」と喜びをかみしめた。

 3度目で成立した立ち合いでがっちりと左上手を引いた。盤石の右四つ。強引に寄った豪栄道の勢いを利用して投げ捨てた。新入幕の2004年夏場所初日に隆乃若を引き落としで破って挙げた白星から14年。先場所は右膝を痛め途中休場、夏巡業では左足首も悲鳴をあげた。「このままけがに泣くのか」という不安をはね返す14連勝で幕内1000勝に到達した。

 前回優勝から人知れず苦しみと戦って来た。元横綱・日馬富士関の暴行現場に同席して減給処分。張り手、かち上げが「見苦しい」と横審から糾弾もされた。“悪役”のレッテルを貼られた裏で尊敬する父の闘病に心を砕いてきた。昨年11月、ムンフバトさんを肝臓がん治療のために日本に呼んだ。「最高の治療を」と手を尽くしたが1月に帰国。春巡業中の4月9日に76歳で亡くなると相撲協会幹部に「葬儀に出たいです。帰国させて下さい」と電話口で泣きながら訴えた。

 賜杯を逃し続けた名古屋場所前、亡き父が夢に出てきた。「太ももバキバキの強い姿でね。何かを伝えたかったんだろうね」と無言の“激励”にこの日、同時快挙という結果でこたえた。「誰も達成していないもの(記録)ですから。未来の大相撲(に入る)子供たちにとって大きな目標を作った」。モンゴルの国民的英雄の父にならい道しるべを刻んだ。次の目標は「目指せ1001勝」。場所後は3か月ぶりにモンゴルに帰国する。千秋楽で14度目の全勝優勝を果たして墓前に報告する“勲章”をもう一つ増やす。(網野 大一郎)

 ◇白鵬の樹立した主な記録

 ▼優勝回数 2015年初場所で横綱・大鵬の32回を更新する33回目。「真の恩返しができたと思う。この大きな結果につながったのも本当に神様が認めてくれたから」。大鵬は13年1月に他界。生前は助言してくれた恩人への感謝を口にした。

 ▼連勝 2010年九州場所2日目に稀勢の里(当時前頭筆頭)に敗れ、同年初場所14日目からの連勝が歴代2位の63でストップ。「これが負けか…」

 ▼通算勝ち星 2017年名古屋場所13日目に元大関・魁皇(現浅香山親方)を超える1048勝目を挙げる。「満足しています。簡単ではなかったけどね」

 ▼年間最多賞 2009年九州場所14日目に元横綱・朝青龍の84勝を超える歴代最多の年間85勝目。「場所が終わってみないとなんだか分かりません。記録は本当にうれしいけど実感はない」。千秋楽も勝って年間86勝とした。

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