貴乃花親方廃業「真実曲げられない」突然すぎる引退届提出

スポーツ報知
引退を決断、フラッシュを浴びながら会見場を去る貴乃花親方(カメラ・佐々木 清勝)

 大相撲の貴乃花親方(46)=元横綱=が25日、都内で会見を開き、日本相撲協会に「引退届」を提出したことを明らかにした。今年3月に内閣府に提出した協会への告発状の内容を事実無根と認めなければ一門に所属できず、親方を辞めなければならないと“通達”されたが、「真実を曲げられない」として引退を決意したという。8人の弟子らの千賀ノ浦部屋への転籍願も提出した上で、30年以上身を置いてきた角界を去る苦渋の決断を下した。一方、同協会側は提出されたのが引退届で、親方が辞める際に必要な退職届ではなかったため、受理していないことを明らかにした。

 最後まで己を貫いた。「真実を曲げて、告発は事実無根だと認めることは私にはできない」。日本相撲協会に「引退届」を提出した4時間後、午後5時に会見場に姿を見せた貴乃花親方は、数十本のマイクを前に突然の決断に至った理由を説明した。「告発状が事実無根なものだと認めないと、親方を廃業せざるを得ないと有形無形の要請を受けてきた」と協会から“圧力”があったことを主張。それでも自身の正当性は曲げられない、と繰り返した。

 3月に弟子の貴ノ岩への暴行をめぐる協会の対応を不服として内閣府に告発状を提出。その後、同じく弟子の貴公俊の暴行が発覚し、同28日に取り下げていたが、会見によると、8月7日に八角理事長(元横綱・北勝海)名義で、告発内容は「事実無根」とする弁護士の見解を踏まえた文書が届いた。貴乃花親方は文書で反論。一方、7月の協会理事会では、助成金の使途把握などの理由で、全ての親方は一門に所属することが義務づけられた。秋場所後半に、ある役員の親方から、口頭で「一門に入る条件として、(告発が)事実無根な理由においてなされたものと認めるよう」求められたという。

 貴乃花親方は、自身の告発内容を否定しなければ一門に入れず、一門に入れないと部屋は存続できずに、弟子たちが路頭に迷うと判断。「無念というか、悲しい思いですけど、弟子たちが土俵で活躍するのが何より最優先」と自ら身を引き、弟子を兄弟子の千賀ノ浦親方(元小結・隆三杉)が率いる部屋へ移籍させるように電話で依頼したという。

 関係者によると、秋場所14日目の22日に退職を決断。24日には自身を応援するサイト上のブログで退職を示唆するコメントを記していた。「最終的に決断したのは今朝早く」とこの日午前に弟子たちに正式に決意を伝えたという。

 会見ではNHKベテランアナウンサーから「結論を急がないでほしい」と翻意を促す異例の要望まであった。貴乃花親方、代理人弁護士ともに、訴訟などを含めた協会への異議申し立ては「特に現在はない」とし、協会に残る可能性も否定した。15年前に現役引退した際には「非常にすがすがしい」と語った親方。この日は「苦渋の決断ではありますが、何より弟子たちの将来を見据え断腸の思い」との言葉を絞り出した。協会は届けを受理していないことを明らかにしたが、元「平成の大横綱」は、あまりにも突然すぎる幕引きを決めてしまった。

 ◆貴乃花 光司(たかのはな・こうじ=本名・花田光司)1972年8月12日、東京・中野区生まれ。46歳。88年春、初土俵。90年夏、新入幕。95年初、第65代横綱に昇進。若乃花と兄弟横綱として活躍し優勝22回。2003年初場所中に引退し、一代年寄「貴乃花」を襲名。04年2月に二子山部屋を継承し貴乃花部屋を創設。家族は景子夫人と1男2女。

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