稀勢の里、3連敗…横綱の初日から4連敗は異例

スポーツ報知
北勝富士(右)に突き落としで敗れた稀勢の里(カメラ・岩下 翔太)

◆大相撲九州場所3日目 ○北勝富士(突き落とし)稀勢の里●(13日・福岡国際センター)

 復活の糸口が見当たらない。自身初の一人横綱を務める稀勢の里(32)=田子ノ浦=は、前頭筆頭・北勝富士(26)=八角=に突き落としで完敗した。横綱の初日からの3連敗(不戦敗除く)は1949年の15日制定着後に6例あるが、平成以降で皆勤の例はない。和製横綱が途中休場は避けられない苦境に立たされた。休む決断を下せば、8場所連続休場明けの秋場所で10勝を挙げ沈静化していた進退問題が、再燃しかねない。

 肩を下に土俵に横ばい。一点を見つめたまま、稀勢の里は動けなかった。2日続けて転がされた。花道で顔をしかめる。支度部屋に入る際、天を仰いだ。生命線の左差しを北勝富士に封じられた。左半身になったところをのど輪で起こされ、突き落とされた。一人横綱として務める結びで連日の金星配給。支度部屋でまげを結う間、質問が5つ、報道陣から飛んだが、ぼうぜん自失の体で、取材の輪が解けても約1分、立ち上がることができなかった。

 稽古場での好調さは幻だったのか。北勝富士は6日の出稽古で9勝3敗と圧倒し、場所前の「優勝宣言」のきっかけになった相手。2日目の幕内・妙義龍(境川)に続き、出稽古で完勝した相手にまたも不覚を取った。藤島審判長(元大関・武双山)が「左一辺倒では差せない」と言えば、芝田山親方(元横綱・大乃国)も「左しか使ってないし、足も出ていない。右が全然使えてない」と声をそろえ、完全復活への道のりが遠いことを残念がった。

 途中休場がいよいよ現実味を帯びてきた。本場所が15日制になった49年以降、初日から3連敗した横綱は過去6例あり、92年の旭富士以来。そのうち、4日目からも土俵に上がったのは88年秋の大乃国だけで、平成以降で皆勤したのはゼロだ。大乃国は4日目に勝っており、不戦敗を除き4連敗した横綱はいない。もし稀勢の里が出場を決断すれば、前例のない不名誉記録の重圧とも闘うことになる。8場所連続休場明けの秋場所で2ケタ勝利を挙げて、進退危機を脱したかに思えたが、再び休場となればそれも再燃しかねない。

 八角理事長(元横綱・北勝海)は「精神的に苦しいよね。横綱というのは苦しいから。乗り越えてほしい」と思いやった。取組後の夜8時過ぎ、福岡・大野城市の田子ノ浦部屋宿舎に戻ったが、前夜の笑顔とは一転して険しい表情で無言を貫いた。この日朝、初日から非公開だった稽古が冒頭の20分だけ公開されたが、その後は、シャッターで固く閉ざされた。和製横綱の心境を示すかのようだった。今の稀勢の里に“乗り越える力”は残っているか。心中は、本人にしか分からない。(大谷 翔太)

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