御嶽海、大関取りへＶ字回復「２ケタ（勝利）しか狙っていないから」

◆大相撲九州場所　７日目　○御嶽海（はたき込み）貴景勝●（１７日・福岡国際センター）

　関脇・御嶽海が、初日からの６連勝で単独トップに立っていた小結・貴景勝に土をつけた。はたき込みの際、まげをつかんでいたのではと物言いがついたが、軍配通り。大関取り再挑戦の今場所は１１勝が“ノルマ”。既に３敗を喫して黄信号がともっていたが、中日を前に息を吹き返し、３横綱不在の大混戦に逆転Ｖも視野に入れた。７日目までに無敗が消えるのは昨年秋場所（６日目）以来。１敗は貴景勝と平幕の大栄翔、阿武咲の３人となった。

　初賜杯はそう簡単には抱かせない。Ｖ経験者の御嶽海が、先輩三役の意地で無敗の貴景勝を止めた。突き押しで前に出て、相手のいなしに前のめりになりながらも、最後は右手で土俵にはわせた。１３秒４のはたき込み。まげをつかんだか否かで物言いがついたが軍配通り。土俵脇で静かに勝利の味をかみしめた。貴景勝戦は３連勝。支度部屋では目を閉じて「自分の相撲を取るだけでした」と繰り返した。

　本場所で力を発揮する御嶽海には“稽古嫌い”のイメージがついているが、今回は少し違った。九州入り後は大関・栃ノ心らが所属する春日野部屋と合同稽古を繰り返した。初日４日前に相撲を取る稽古を終える予定が、翌日（８日）も“もう一丁”の出稽古。「本当は昨日で終わりにしようと思ったんだけどね～」と笑顔でけむに巻いたが番数を重ね、「２ケタ（勝利）しか狙っていないから」と闘志を燃やしていた。

　途絶えそうになった大関への道を切り開く。今場所と同じく３横綱不在の名古屋で１３勝して初Ｖ。先場所こそ９勝で昇進持ち越しとなっていたが、九州でも大関目安の「三役で直近３場所３３勝」には１１勝で届く。

　５日目までの３敗で周囲の期待は消えかかっていたが、この日の大一番で評価はＶ字回復した。八角理事長（元横綱・北勝海）は「恐れずに押し込んだ。いなしもよく残った。優勝したこともあるし、実力がある。息を吹き返した」と絶賛。昇進へ、勝ち星だけでなく「相撲内容を問う」としていた阿武松（おうのまつ）審判部長（元関脇・益荒雄）も「下からあてがって、しのいで反撃した。最高の相撲」と褒めちぎった。

　２場所ぶりの賜杯へ中日を前に２差接近した。「冷静に、気を引き締めてやるだけです」。一年納めの九州でダブルの歓喜を引き寄せる。（小沼　春彦）