貴景勝、栃ノ心吹っ飛ばした トップ守り勝ち越し一番乗り

スポーツ報知
栃ノ心(手前)を押し倒しで破り、勝ち越しを決めた貴景勝(カメラ・岩下 翔太)

◆大相撲九州場所 9日目 ○貴景勝(押し倒し)栃ノ心●(19日・福岡国際センター)

 小結・貴景勝の勢いが止まらない。大関・栃ノ心を豪快に押し倒して幕内勝ち越し一番乗り。1横綱2大関を撃破し、優勝争い単独トップの座も守った。3横綱不在場所は過去5度あるが、小結以下が賜杯を抱いた例はない。混迷の九州は2敗で大関・高安と平幕の大栄翔、碧山、阿武咲(おうのしょう)の4人が追う。

 191センチ175キロの筋肉の塊を、175センチ170キロの貴景勝が吹っ飛ばした。立ち合い、栃ノ心に低く当たって一突き。前みつを取られそうになったが更に低く、懐に入って、もう一突き。2秒2で、大関に尻もちをつかせた。結びの一番で、ファンにまばたきも許さないほどの速攻に会場は熱狂。だが22歳の若武者は、表情ひとつ変えず、勝ち名乗りを受けた。「出来ることを冷静に考えながら、胸を借りるつもりでいった」。支度部屋では息を切らしながら、淡々と振り返った。

 中日に再び立った単独トップの座を守った。4場所連続の勝ち越しを、17年初場所の新入幕以来、自己最速の9日目に決めた。2敗で4人に追われているが、初優勝はもちろん視野に入っている。小結での幕内Vは、昭和以降でも8例しかない。更に3横綱が全員休場した場所は過去に5例あるが、小結が優勝した例もない。歴史に名を刻む白星を、確実に積み重ねている。

 父の教えが実を結んだ。小学3年で相撲を始めてからは、もろ差しを得意としていた。近畿大会では敵なし。だが小学4年で臨んだ全国大会。各地から集まった同級生は、身長が15センチ以上、体重は40キロ以上自分より大きかった。結果は1回戦負け。組んだら勝てない。父・一哉さんから「突き押ししかない」と言われた。突き押しのスタイルを磨き上げた。

 八角理事長(元横綱・北勝海)は「いいんじゃない。迷いがない。馬力がある。こういう相撲を見ると、後半も中心になる」と快進撃を絶賛。これで幕内通算99勝で、22歳にして100勝に王手もかけた。それでも「これから負けたら8勝7敗。15日間の勝負。あと6日間、自分と向き合っていく」と戒めるように語った。自らと向き合い、勝ち続ける。(大谷 翔太)

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