稀勢の里、進退場所で黒星発進 横審メンバーから不安の声「残念」「全うできるか不安」

スポーツ報知
御嶽海(左)に押し出しで敗れ顔をしかめる稀勢の里。見守った相撲ファンからも「あー」と声が漏れた(カメラ・清水 武)

◆大相撲初場所 初日 ○御嶽海(押し出し)稀勢の里●(13日・両国国技館)

 進退問題が再燃している横綱・稀勢の里(32)=田子ノ浦=が、初日から相撲人生の崖っぷちに立たされた。小結・御嶽海(26)=出羽海=に押し出されて黒星スタート。横綱に昇進した17年春場所以降、初日に敗れた過去5場所はすべて途中休場している。途中休場した昨年11月の九州場所後、進退を問う初の「激励」を出した横綱審議委員会(横審)のメンバーからは、現役続行の“最低条件”とも言える15日間皆勤を不安視する声が相次いだ。

 進退を懸けた初日、稀勢の里に厳しい現実が突きつけられた。御嶽海との結びは生命線の左差しも、突き落としも不発。7秒9で押し出され、力なく土俵を割った。館内はため息に包まれ、うつむきながら花道を引き揚げた。場所前の稽古は突き押しで調子を上げてきたが、その攻め手は選択せず。愚直に「左」をねじ込もうとした。支度部屋では「左差し狙い? はい」と応え、無数のフラッシュに悔しさが浮かび上がった。

 締め込みを紺色から赤紫色に新調。17歳の新十両から10年以上も親しんだ、えんじ系に変えたのは力士人生を懸けた決意の表れだった。昨年11月の九州場所で右膝を負傷し、横綱87年ぶりとなる初日から4連敗(不戦敗除く)で途中休場。横審から初の「激励」決議を真正面から受け止めた。一時的にファンを落胆させるが、昨年12月の冬巡業を全休。「体をしっかり見つめ直す」と東京・江戸川区の部屋にこもった。四股など基本運動を繰り返し、先代師匠の故・鳴戸親方(元横綱・隆の里)の遺影が見守る土俵で新年に備えた。

 横綱昇進以降、初日黒星なら5回すべて途中休場しており、データ上は休場率100%。完全復活への道は険しくなった。横審は初場所休場なら内規で最も厳しい「引退勧告」の可能性を否定していない。初日の土俵を見守った横審メンバーからは不安の声が上がった。

 北村委員長「残念です。あそこで頑張りきれないということは(場所を)全うできるか不安になってきますね」

 高村委員「残念至極。自分の力を信じてやってほしい」

 都倉委員「言葉もありません。後がないのは本人が一番分かっている」

 山内委員「言葉が出ませんね。どうして慌てるのか。開き直ってやってもらいたい」

きょう難敵逸 2日目の幕内・逸ノ城(湊)も直近3連敗中の難敵。兄弟子だった西岩親方(元関脇・若の里)は「見守ることしかできない。横綱らしく堂々と相撲を取ってほしい」と願った。2年前の初場所で初V&日本出身19年ぶりの綱取りを成就させ“稀勢フィーバー”を巻き起こした。最後に「ここからか?」と問われると「うん、そうだね」と、つぶやいた。このまま終わるつもりはない。(小沼 春彦)

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