稀勢の里、3連敗で崖っぷち 横綱昇進後36勝35敗で歴代最低勝率

スポーツ報知
栃煌山(手前)に寄り切られ、ぼう然と立ちつくす稀勢の里(カメラ・佐々木 清勝)

◆大相撲初場所 3日目 ○栃煌山(寄り切り)稀勢の里●(15日・両国国技館)

 引退危機の崖っ縁に立たされている横綱・稀勢の里(32)=田子ノ浦=は、幕内・栃煌山(31)=春日野=に寄り切られ、先場所に続く初日からの3連敗を喫した。昨年秋場所千秋楽から3場所にわたる連敗(不戦敗除く)も「8」となり、1999年の貴乃花を抜いて横綱ワースト記録を更新。支度部屋では無言を貫いたが、常に優勝争いを義務づけられる番付最高位として、いよいよ“決断”が迫られている。

 横綱の威厳は、もはや完全に消えうせた。相撲人生の土俵際に立つ稀勢の里があっけなく初日から3連敗。得意の左押っつけは力なく、もろ差しを許し寄り切られた。負け残りの土俵下で目はうつろ。支度部屋では何かを覚悟したように腕組みし「横綱として思うところは?」と問われても、固く口を閉ざした。

 2日連続、通算18個目の金星配給。昨年11月の九州場所、初日から3連敗後に“強行出場”して4日目に苦杯をなめさせられ、途中休場の引き金になった相手も同じ栃煌山だった。不戦敗を除き、3場所にわたっての8連敗は、99年の貴乃花を抜いて15日制定着(49年)以降では横綱ワースト。稀勢の里に対して、進退に迫る初の「激励」決議を出している横綱審議委員会は、今場所も休場すれば、内規で最も重い「引退勧告」の可能性も否定していない。休場して再起を期す選択肢がない中で、同じように負け続けても出た横綱という前例すらなくなった。

 19年ぶりの日本出身横綱になって以降、在位12場所目で既に9場所を休場した。17年春場所で左上腕、大胸筋などを負傷し、新横綱Vの代償として左からの攻めは輝きを失った。勝ちパターンの強烈な左押っつけの威力は半減。昨年7月の名古屋場所では年6場所制(58年)以降の横綱でワーストの8場所連続休場を記録。本場所土俵から長く離れたことで「太もも裏、でん部の筋力が落ちた」と指摘する協会関係者もおり、下半身から崩れ落ちる負けも目立つ。在位中は36勝35敗97休で、休場を除く勝率(・507)も歴代最低。不名誉な記録だけが加わり、常に賜杯争いの先頭に立つことを求められる番付最高位の誇りはもう保てていない。

 テレビカメラ8台、約60人の報道陣が殺到した東京・江戸川区の田子ノ浦部屋に午後7時前、稀勢の里は戻った。“次”を見据えた体の治療などで部屋に姿を現していなかった初日、2日目の打ち出し後とは違う行動だった。警察官も出動する物々しい雰囲気の中、同8時半過ぎに部屋を出た。師匠・田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)と話し合ったとみられるが、14日の2連敗後は横綱の出場可否を明かしていた同親方も、屈辱的な黒星を重ねたこの日は取組後に部屋前で対応しなかった。

 16日は地元・茨城の郷土後援会が駆けつけるが、これだけ状況が悪化した中で、先場所のように、なりふり構わず4日目の土俵に立つことも考えづらい。相撲人気を一気に押し上げた功績は大きい。和製横綱の引き際が問われている。(小沼 春彦)

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