白鵬、稀勢の里をねぎらう「一生懸命さというのが他の力士に比べてあった」

スポーツ報知
17年初場所千秋楽で白鵬(右)をすくい投げで破った稀勢の里

 日本相撲協会は16日、理事会を開き、第72代横綱・稀勢の里(32)=田子ノ浦=の現役引退と年寄「荒磯」襲名を承認した。稀勢の里は両国国技館で会見し、17年間の土俵人生に「一片の悔いもありません」と涙。19年ぶりの日本出身横綱として絶大な人気を誇ったが、左大胸筋などのけがに苦しみ在位はわずか12場所だった。

 高い壁となって稀勢の里の前に立ちはだかり、時には痛い目に遭わされてきた白鵬はこの日の朝稽古後、ねぎらいの言葉を贈った。「寂しいね。本当にお疲れさま。一生懸命さというのが他の力士に比べてあった力士だった」。常に孤独と言われる横綱だからこそ分かる胸中も代弁した。「横綱は負ければ引退。引退は死ぬってこと。生きるか死ぬかの戦いをしているからね」。苦しみ抜いて出した好敵手の決断を尊重した。

 印象に残る稀勢の里戦は、横綱・双葉山の最多69連勝超えを狙いながら、連勝を63で止められた2010年九州場所2日目の一番。「あの黒星があったから、ここまで頑張れた」。新記録は逃したが「自分はまだまだ」と新しいモチベーションを与えてくれたことに感謝した。

 稀勢の里も思い出の一番に、場所後の横綱昇進へ有終の美を飾った17年初場所千秋楽の白鵬戦を挙げた。大関昇進を決めた11年九州場所は、千秋楽で琴奨菊に黒星を喫したことを引き合いに出し「すごく悔しい思いをしたので、次に昇進する時は絶対負けないという強い気持ちだった」と振り返った。ライバルだった朝青龍、白鵬、日馬富士らに対して「自分を成長させてくれた。モンゴル出身横綱のおかげ」と感謝した。

 昨年九州場所前に行われた横綱会の終了後、白鵬は稀勢の里に声をかけた。「(鶴竜も含めた)3横綱で東京五輪で土俵入りしたいね」。その言葉に、稀勢の里は笑顔で応えた。夢はかなわなかったがこの日、4連勝を挙げるなど最強横綱の戦いは続く。「(角界を)託されたと思っているので責任があるのでやらなきゃいけない。勝っていくしかない」。稀勢の里は今後、敵から友人へと変わる。「土俵を離れると本当に明るいんだよ。今度はお酒を飲みに行けるかな」。白鵬は前を向き、いたずらっぽく笑った。(斎藤 成俊)

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