【尾車親方の目】貴景勝は考えすぎ…立ち合いなぜもろ手

スポーツ報知
はたき込みで貴景勝(右)を破った逸ノ城(カメラ・石田 順平)

◆大相撲春場所14日目(23日・エディオンアリーナ大阪)

 大関取りの関脇・貴景勝(22)=千賀ノ浦=は、逆転初Vを狙う幕内・逸ノ城(25)=湊=にはたき込まれて5敗目を喫し、昇進目安の2ケタ白星目前で足踏み。千秋楽は、7勝7敗で負ければ関脇に降下するカド番大関・栃ノ心(31)=春日野=が相手で、壮絶な“入れ替え戦”に臨むことになった。

 貴景勝の立ち合いの真意が分からない。なぜ、もろ手で逸ノ城の胸を突いたのか。13日目の一番で逸ノ城は豪快な右のかち上げで御嶽海の上体を起こして勝負を付けた。それを嫌って距離を置く作戦を思い付いたのか。それとも土俵の上でひらめいたのか。踏み込んでのもろ手は難しい。手は出ても足が止まるからだ。その結果が土俵の上でのはたき込みになった。

 大関という地位が見えて考え過ぎたのか。いくら平静を演出しても22歳の若者だ。平常心を欠いていたのかもしれない。大事な一番こそ自分の持っている力を全てぶつけることが必要。負けても自分の財産になる。貴景勝には「自分に勝てないと相手にも勝てない」という言葉を贈りたい。

 平成最後の場所の千秋楽で本当に厳しい一番が組まれた。負けると大関陥落の栃ノ心と大関を狙う貴景勝の死闘。こんな筋書きは誰にも書けない。両力士は眠れない夜を過ごして決戦の土俵に上がる。(スポーツ報知評論家)

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