NHKカメラマンが見続けた高木美帆の「考え、挑み続ける姿」

スポーツ報知
高木美帆

 高木美帆を8年間、密着取材で追い続けてきたカメラマンがいる。NHK報道局映像センター映像取材部の近藤健太さん(37)が、14年ソチ五輪落選の挫折を乗り越え、銀メダルをつかむまでの歩みを「見た」。

 滑り終えるたびに腕を組み遠くを見つめる高木選手。「反すうしてフィードバックして、頭の中をフル回転させている」。これまで20以上のニュース番組の特集やドキュメンタリー番組を発信し、8年5か月の長期取材で撮影したテープやディスクは500本に及びます。記録した映像から見えてくるのは「考え、挑み続ける姿」でした。

 初めて出会ったのは中学3年生だった2009年。その日はサッカーの試合に出場し、男子に当たり負けすることなく懸命にボールを追いかけていました。一方、氷上ではサッカーで鍛えた足腰を生かした低く伸びのあるスケーティングで同世代のトップを走り続けましたが、15歳で出場したバンクーバー五輪で人生初の惨敗。「味わったことのない悔しさ」がこみ上げてきたといいます。そんな経験をしたスケーターがどのような人生を歩んでいくのか。その姿を映像で記録し続けたい一心で、その後も追いかけてきました。

 高校進学後、4年後に向けて取り組んだのは1本の足に重心を乗せて氷を蹴るフォームの習得。3年間、成績がなかなか伸びずに苦労しますが「変えようと思っていろいろ考えるのは楽しい」と、前向きに挑み続けました。しかし、ソチ五輪は落選。本番の1500メートルのレースは国内の遠征先のホテルで観戦しました。

 その様子を撮影することを許してくれた高木選手。ほとんど言葉を発することはありませんでしたが、五輪記録で優勝したオランダ選手の滑りを見てひと言つぶやきました。「レベルが違う」。この時を境に「次の4年間はすべてをスケートに懸ける」と話すようになりました。彼女の胸の内にあったのは「本気で五輪に挑戦する」覚悟でした。

 あれから4年。世界のトップ選手となってもなお、練習やレースのたびに課題を口にし、より速くなるために何が必要か考え、新たな試みに挑んできました。その取り組みがようやく花を咲かせた銀メダル。私自身にとっても、長年の取材が報われた瞬間でした。この後もメダル獲得に大きな期待がかかる種目が続きます。高木選手の活躍を映像で記録し続け、全国の視聴者に届けたいと思います。

 ◆近藤 健太(こんどう・けんた)1980年12月23日、大阪府生まれ。37歳。大阪市立大を卒業し、2004年にNHKに入局。松山、釧路、札幌放送局を経て、15年から報道局映像取材部。

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