羽生結弦、仙台平はかま姿「皆様と共に取れた賞」…国民栄誉賞授与式

スポーツ報知
国民栄誉賞授与式ではにかんだ笑顔を見せる羽生(カメラ・中島 傑)

 フィギュアスケート男子で66年ぶりの五輪連覇を成し遂げた羽生結弦(23)=ANA=の国民栄誉賞授与式が2日、官邸で行われた。羽生は出身地の伝統織物「仙台平(せんだいひら)」のはかま姿で臨み、地元愛をにじませた。東日本大震災などの苦難を乗り越えての偉業で、国民に感動や勇気を与えたことが評価された。個人としては最年少で、スケート界からは初めて。「皆様と共に取れた賞」を理由に、記念品については辞退した。

 羽織はかまをまとった羽生から、仙台愛と感謝の気持ちがあふれていた。「皆さまと共に取れた賞という気持ちがある。僕の個人の気持ちとかはあまり出したくないので」。受賞者の希望も込められる恒例の記念品は辞退した。一人じゃない。フィギュアスケートという競技に携わってきた先輩スケーターや、ファンの人たち。多くの支えに思いを巡らせた。

 はかまは江戸時代から続く絹織物「精好(せいごう)仙台平」の技術保持者として、人間国宝に認定された仙台市の甲田綏郎(よしお)さん(89)から贈られた。6月に羽生の国民栄誉賞受賞を知った甲田さんから、仙台市を通して申し出があった。「仙台を代表する人、そして震災復興にも尽力してくださっている。立派な装いで式に臨んでほしい」。帯と共に届いたはかまと、羽生家の家紋が入った羽織をあわせ、晴れ舞台に立った。安倍晋三首相を、「どんな格好をしても似合いますね」とうならせた。

 2011年に仙台市のリンクで練習中に東日本大震災に見舞われた。避難生活を経験し、スケートをやめようと悩んだこともあった。「応援してもらった立場だからこそ、皆さまの力になりたい。直接的に何か手助けをできる立場ではないが、国民栄誉賞をもらったことで、少しでも希望を抱けるきっかけや皆さまの心が一つになる存在になりたい」。スケーターとして、被災地に光を照らしていく。

 平昌五輪直前に痛めた右足首の状態も回復。シーズンの本格開幕を告げるGPシリーズは第3戦フィンランド大会(11月2~4日)、第5戦ロシア杯(同16~18日)に出場する。1日まで続いたアイスショーを終え、徐々に競技モードに入りつつある。「素晴らしい賞をいただき、スケーターとしても人間としても普通ではいけない。自分の名に、そしてこの国民栄誉賞という素晴らしい名に恥じないようなスケートをしていきたい」。凜(りん)とした表情で、賞の重みをかみしめた羽生。これからも、愛するスケートと共に生きていく。(高木 恵)

 〇…「仙台平」は、製品に硬さと軟らかさの融合した絹を使用。独自技術により、しわがつきにくく、独特の光沢を放ち、感触が心地よいという。羽生が着用したはかまには夏用の絹が使用された。同社商品を取り扱うことがある日本橋高島屋によると、商品は30万~100万円を超えることもあるという。この日「仙台平」本社には取材が殺到。一時はホームページのサーバーがダウンするなどの影響が出た。

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