羽生結弦、復帰戦Vもフリー2位に「もっと強くなりたいと心から思う」

スポーツ報知
優勝し、表彰式で笑顔を見せる羽生結弦(左は2位の車俊煥、右は3位のサドフスキー=カメラ・高木 恵)

◆フィギュアスケート オータム・クラシック 最終日(22日、カナダ・オークビル)

 【22日=高木恵】五輪連覇の羽生結弦(23)=ANA=は4回転サルコーで転倒するなど、フリーで165・91点の2位にとどまったが、合計263・65点で2月の平昌五輪以来の復帰戦を優勝で飾った。今季は勝負よりもスケートを楽しむことを目標に掲げていたが、不満が残る右足首故障からの復帰戦に、「今はもう『勝ちたい』しかない」と、再び闘争心を燃えたぎらせた。

 フィニッシュで上げた左腕を下ろしながら、羽生は悔しそうに何かを叫んだ。肩で息をしながら、表情をゆがめた。自分への怒りから、なかなか立ち上がることができなかった。

 「めちゃくちゃ悔しい。試合で勝ちたい気持ちがすごく強くなった。五輪が終わって、ちょっと抜けていた気持ちの部分が、また自分の中にともった。火をつけられたような状態」

 16歳の車俊煥(韓国)にフリーで敗れ、合計でも3・87点差と迫られた復帰戦が闘争心に再点火した。

 4回転サルコーで転倒後、4回転トウループ―3回転半(トリプルアクセル)の連続技に試合で初めて挑んだが、4回転が2回転になり失敗。スピンでは、条件を満たしていないとみなされたものが2つあった。「自分が滑りたかったプログラムに対しての実力が、あまりにも足りない。体力も足りない」。芸術面を評価する演技構成点は2016年のスケートカナダ以来約2年ぶりに、全5項目が8点台にとどまった。

 憧れるロシアのエフゲニー・プルシェンコの演目「ニジンスキーに捧ぐ」をアレンジしたフリーは、原点回帰の意味を込め「Origin」と名づけた。全てをささげてかなえた五輪連覇の翌シーズンは、結果にこだわらず幼い頃のようにスケートを楽しもうと誓ったが、初戦で早くも変心。「今はもう『勝ちたい』しかない。それが一番自分らしいのかも。頑張ったって言えるぐらい練習していきたい」と、目に力を込めた。

 次戦のGPシリーズ・フィンランド大会は1か月半後に控える。「もっと強くなりたいと心から思う。しっかりと計画を練って、最短で強くなりたい」。去り際にポツリと言った。「勝たなきゃ意味ないんで」。羽生節が帰ってきた。勝負にこだわることで自らを高めてきた王者は、競技者としての原点に回帰する。

 ◆羽生の過去の初戦(オータム・クラシック)フリー後のコメント

 ▽15年・優勝 (277.19点=SP93.14点、フリー184.05点)後半の4回転トウループで転倒。「まだ4回転を3つ入れた構成を決められていないのが悔しい」

 ▽16年・優勝 (260.57点=SP88.30点、フリー172.27点)後半に2度転倒。「1つとは言わず、10個くらい皮がむけたなと思えるくらい、この1か月で追い込んでいきたい。次の試合ではノーミスでやります。絶対に。そうじゃなきゃ、羽生結弦じゃない」

 ▽17年・2位 (268.24点=SP112.72点、フリー155.52点)右膝違和感の影響で4回転ループを回避。ジャンプ構成を落とすも成功は8本中3本だけ。「挑戦しないと僕らしい演技は絶対にできないと分かった」

スポーツ

×