羽生結弦、“鬼門”初戦で世界最高V…4回転半ジャンプ挑戦も視野「新しいスタートが切れた」

スポーツ報知
羽生結弦

◆フィギュアスケート グランプリ(GP)シリーズ 第3戦 フィンランド大会(4日、ヘルシンキ)

 【4日=高木恵】男子フリーで羽生結弦(23)=ANA=が、3日のショートプログラム(SP)に続いてフリーも1位の190・43点、合計297・12点で優勝。SPを含めフリー、合計すべてでルール改正後の世界最高得点をそろえ、世界初の大技となる4回転トウループ―3回転半ジャンプ(トリプルアクセル)も着氷させた。自身初のGP初戦V、通算9勝目。次戦は16日開幕のロシア杯に出場する。年末の全日本選手権後には4回転半ジャンプ挑戦も視野に入れていることを明かした。

 左手を突き上げるフィニッシュポーズで、羽生は人さし指を立てた。勝利にこだわり、構成を変更した大会でつくったナンバーワンポーズ。「やっと初戦で勝てた。アンダーローテーション(回転不足)とか、ふらついているジャンプも多々あった。いろんな課題があるけど、全部立てたことは大きなステップになった」。9季目で自身初のGP初戦優勝を飾った。

 フィギュア界の常識を軽々と超えていく。着氷でバランスを崩しかけ出来栄え点(GOE)はマイナスがついたが、世界初の4回転トウループ―トリプルアクセルの連続技を着氷させた。「自分の中では加点がついてこその成功。この試合で終わらせるつもりはない。体操の内村(航平)さんも言ってますが、最後は決めないといけないし、決めてからがスタート」。トリプルアクセルを助走なしで跳ぶ究極の大技の精度を磨いていく。

 基礎点が1・1倍になる後半に連続ジャンプを3本組み込むハイリスクな構成を「4回転を入れつつ、3回転―3回転も入れつつ、アクセルも2回入れたいという欲張りなことを考えてしまったら、4回転トウループの後にアクセルを入れるしかないかな」と笑う。演技構成表からは2回転ジャンプの文字が消え、一人異次元をいく。ジャンプ偏重を防ぐためにルールが変わっても、羽生の強さは変わらない。

 実は、会場の氷に苦戦していた。「こっちに来る前までの練習で、ループはほとんど外していない。こっちに来て跳べなくてビックリしていた」。だが試合当日朝の練習で、スピードを控えれば跳べることに気づいた。「ループは特に、エッジ系ジャンプは慎重にいった」と対応力が光った。

 今季は4回転アクセルの成功とスケートを楽しむことをテーマに掲げていたが、9月のオータム・クラシックで不満の残る内容に終わり闘志に火がついた。4回転アクセルの練習は中断中。「今、こんなことを練習している場合じゃないなと気づかされた。試合で勝たないと意味がない」。現在は難しいプログラムの完成型を目指しつつ、年末の全日本選手権後の挑戦を視野に入れている。「課題も見つかり、自分の心のともしびに薪を入れられた。今はロシアに向けてたぎっている」。完勝にも満足せず、その目は次戦を見ている。

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