深み増す羽生の「秋によせて」 「曲の解釈」10点満点2人で2戦連続世界最高得点

スポーツ報知
羽生の今季全成績と男子SPの今季世界5傑

◆フィギュアスケート GPシリーズ第5戦ロシア杯 第1日(16日、モスクワ・メガスポルト)

 【16日=高木恵】男子ショートプログラム(SP)で羽生結弦(23)=ANA=がルール改正後の世界最高得点を塗り替える110・53点をマークして首位に立った。GPフィンランド大会に続く2戦連続の“世界新”。2位に20点以上の大差をつけ、ファイナルを除けば自身初となる同一シーズンのGPシリーズ2連勝と、日本男子単独最多のGP10勝に王手をかけた。友野一希(20)=同大=は82・26点で4位。

 総立ちの観客の拍手と歓声に浸るように、羽生は空を見つめた。「ノーミスと言っていいんじゃないかなと思える出来。ちょっとほっとしている」。指先、表情。細部まで意識しながら演じ上げた「秋によせて」。得点が表示されると笑顔になった。2週前のフィンランド大会で記録した世界最高得点を3・84点更新。2位に20点以上の差をつける異次元の滑りだった。

 最大の見せ場で、リンクサイドの名伯楽の姿が目に飛び込んできた。羽生の心が一気に燃え上がった。「秋によせて」は憧れるジョニー・ウィアーの演目。ウィアーのプログラムを振り付けたタチアナ・タラソワ氏が立っていた。「そこ(タラソワ氏)に向かって跳んでいった」。魂を込めた最後のステップだった。「表現に関してはうまくできた」。芸術面を評価する演技構成点の「曲の解釈」は、9人中2人のジャッジが10点満点をつけた。

 冒頭の4回転サルコー、3回転半ジャンプ(トリプルアクセル)と華麗にジャンプを重ねていった。後半の4回転―3回転の連続トウループは「ぐらついている。もっときれいに跳びたい」と言うものの、すべてのジャンプで出来栄え点(GOE)は3点以上を引き出した。後半の曲の盛り上がりに合わせ、こだわり作り上げてきたステップとスピンは初めて全てで最高評価のレベル4をそろえた。

 旧ルールでの世界最高は羽生の112・72点(17年オータム・クラシック)。今季からルールが改正され、ジャンプの基礎点は下がり、GOEの幅は7から11段階に広がった。より完成度が求められるルール下でも、羽生のうまさと強さは際立っている。「しっかりレベルも取れたし、GOEも取れ始めている。いい傾向」。今季3戦目にして、演目の円熟味が増してきた。

 GP連勝と、日本男子単独最多の通算10勝に王手をかけた。17日のフリーはロシアのエフゲニー・プルシェンコの伝説の演目「ニジンスキーに捧ぐ」をアレンジした「Origin(オリジン)」。「明日はプルシェンコさんに向けて頑張りたい」。皇帝の国で、思いを込めて舞う。

 ◆羽生に聞く

 ―中1週での試合。

 「コントロールした練習をした。ただはりきってダーってやるんじゃなくて、一歩引いて練習したり、しっかり追い込んだり。そういう日をバランスよく配置した。自分で考えて、そこをうまくやれた」

 ―点数について。

 「目標はとりあえず106点。フィンランドと同等くらい取れれば満足かなと思っていたので、がんばれたかなと思う」

 ―2戦連続の世界最高得点。何点まで伸びる?

 「いやあもう、多分もう、これがマックスじゃないかなって。実質ほぼ、マックスじゃないかなって思います。この構成では」

 ―オーサーコーチが「美しかった」と。

 「ジャンプに集中しようと考えていたが、どちらかというと表現に振った試合。指先だとか表情だとか、一つ一つの音の感じ方をすごく大事にしたショートだった。そういうのは自分のなかでも評価できる」

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