宇野昌磨、右足首捻挫で棄権寸前も3連覇「僕の、宇野昌磨という生き方」

スポーツ報知
演技を終えガッツポーズを見せる宇野昌磨(カメラ・渡辺 了文)

◆フィギュアスケート 全日本選手権 最終日(24日、大阪・東和薬品ラクタブドーム)

 男子フリーが行われ、平昌五輪銀メダルでショートプログラム(SP)首位の宇野昌磨(21)=トヨタ自動車=がフリー1位の187・04点をマークして、合計289・10点で3連覇を達成。来年3月の世界選手権(さいたま)出場権を獲得した。22日に右足首を捻挫し、棄権の危機に陥るも「宇野昌磨という生き方」を貫いた。国際スケート連盟(ISU)非公認ながら、得点は今季自己ベストを更新。世界選手権の男子代表はほかに田中刑事(24)=倉敷芸術科学大大学院=、羽生結弦(24)=ANA=が選ばれ、平昌五輪代表と同じ3人になった。

 テープがグルグル巻きの右足で、宇野が気迫の4分間を滑り切った。腕を振り下ろし、ガッツポーズを作った。棄権寸前のピンチに追い込まれながら、3連覇を達成した。「苦しい中でもがいて成し遂げたものは、淡々とできたものよりうれしい」。幼い頃から憧れた高橋と並んで立った表彰台。自分を信じ、奮い立たせて駆け抜けた3日間を終え、静かに喜びが湧いてきた。

 痛み止めの薬を服用し、氷上に上がった。右足で思い切り氷を蹴った。冒頭の4回転フリップを成功。疲労がたまる後半ほど、キレが増していった。4回転―2回転の連続トウループ、3回転半ジャンプと決め続けた。「けがをしたことでショートもフリーも自分を信じて演技ができた。変な言い方だけど、けがに感謝したい」。迷いも不安も重圧もすべて振り切った。

 SPが行われた22日の公式練習前、陸上でのウォーミングアップで右足首をひねった。SPで会心の演技を披露した夜、ホテルに戻ると痛みは増し、歩けなくなった。23日の公式練習は休み、病院へ向かった。診断は捻挫だった。棄権を勧める周囲に「どうしても出たい」と譲らなかった。

 この日の滑走6時間前の公式練習ではジャンプも跳べなかった。数周スケーティングをしただけで「これはできない」。さすがに棄権が脳裏をよぎった。ジャンプは着氷で右足の踏ん張りがきかず、2回転半でも着氷が乱れるほど苦戦した。練習後、樋口美穂子コーチに「どうしてそこまでして出たいの?」と聞かれた。きっぱりと返した。「僕の生き方です」

 「簡単に言うとプライド。僕の、宇野昌磨という生き方。どうしても、無理しても、どの試合も、大きな試合も小さな試合も休みたくない。全日本は僕にとって大事な試合。地上を歩けるなら、試合に出たい」

 いつも最後は自分で決めてきた。「いい意味でも悪い意味でも人の言うことは聞かない。自分で考えて、自分で答えを出して、自分で悩んで、また自分で答えを出してを繰り返していこうと思う」。ブレることのない芯の強さが、宇野のスケートを支えている。完治には2週間を要する見込み。主要国際大会は6大会連続で2位を継続中だ。「みなさんに『シルバーコレクター』と言われているので、一番を目指して頑張りたい」。世界選手権は2年連続銀メダル。今大会で得た自信を胸に、さいたまのリンクに上がる。(高木 恵)

 樋口美穂子コーチ「本人(宇野)がどうしても出たいと。けがが後に引いたらどうしようと、ものすごく心配だった。ホッとしています」

スポーツ

×