小林陵侑は要領が良い、悪く言えばズルい…盛岡中央高スキー部・伊東監督手記

スポーツ報知
小林陵の盛岡中央高時代の恩師・伊東雄一監督

◆W杯スキー(10日、オスロ)

 ジャンプ男子はノルウェーのオスロで個人第23戦(ヒルサイズ=HS134メートル)が行われ、小林陵侑(22)=土屋ホーム=が同種目の日本勢初となるW杯個人総合制覇を決めた。127メートル、126メートルの合計250・1点で5位となり、5戦を残し総合2位のストッフ(ポーランド)に逆転される可能性がなくなった。W杯発足から40季目で、欧州勢以外の王者誕生も初となる日本ジャンプ界にとっての歴史的快挙。22年北京五輪の金メダル最有力候補に躍り出た。盛岡中央高時代の恩師で、スキー部の伊東雄一監督(47)はスポーツ報知に手記を寄せた。

 やっぱり、正直うれしいですよ。岩手県人で、盛岡中央高校の一員で、岩手から世界で総合優勝するというのは本当にうれしい。今、岩手はジャンプ選手が少ない。陵侑を目指してジャンプを続けている子もいるので、今回だけじゃなく来年も再来年も、何回も総合優勝するような強い選手になってほしいと思っています。

 兄の潤志郎とは好対照。お兄ちゃんが真面目で努力家とするなら、陵侑は要領が良い。悪く言えば、ズルい(笑い)。練習も連続して5回飛んだりとか、ジャンプに直接関わるものはしっかりやりますけど、持久的な要素はあまりやらなかったですね。勉強もそう。潤志郎は練習が忙しくて課題に手が回らないことがあったけど、陵侑は誰かに見せてもらってとりあえず埋めて出す。試験も要点を聞いていたのか、良く点数を取れていました。

 高校1年生の頃は、体の線が細いイメージ。ただ動きは器用でした。準備運動のサッカーをやらせても、ドリブルやリフティングがうまかった。ハードルを助走をつけずにジャンプで跳び越える練習では、120センチを4~5回連続で跳べていました。他の部員は100センチがやっと。サッツ(踏み切り)で飛び出すタイミングの強さの秘密は、夏にやるハードル練習にあるんじゃないかと思います。

 高校時代はやんちゃというか、精神的に幼い部分もあった。授業中におにぎりを食べているのがバレて、ガッツリ怒られたこともありました。競技成績も良い時は良いけど、ダメな時は沈んでしまう。でも平昌五輪に出た後に会った時は、変わったなと思いました。言葉遣いも雰囲気も。昨年11月のW杯初優勝後に連絡したら「負ける気がしない」というようなことを言っていました。今季大ブレイクして調子の良さをキープしているのは、精神的に成長したのが大きいかなと見ています。

 陵侑には、高校時代にかなわなかった夢があります。お兄ちゃんのように、世界ジュニア選手権で優勝すること。これからはもっと世界で勝つと思いますけど、つまずいた時は高校時代を思い出してほしい。調子が上がらなくて苦労した時期も乗り越えてきたじゃないか、と。3年後の22年には北京五輪があります。弟の龍尚(盛岡中央高)も「3人で五輪に出たい」と言っている。3兄弟で日本を引っ張ってくれるよう願っています。

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