小林陵侑「五輪よりでかい」欧州勢以外で初の総合V

スポーツ報知
W杯スキーの日本勢個人総合優勝者

◆W杯スキー(10日、オスロ)

 ジャンプ男子はノルウェーのオスロで個人第23戦(ヒルサイズ=HS134メートル)が行われ、小林陵侑(22)=土屋ホーム=が同種目の日本勢初となるW杯個人総合制覇を決めた。127メートル、126メートルの合計250・1点で5位となり、5戦を残し総合2位のストッフ(ポーランド)に逆転される可能性がなくなった。W杯発足から40季目で、欧州勢以外の王者誕生も初となる日本ジャンプ界にとっての歴史的快挙。22年北京五輪の金メダル最有力候補に躍り出た。

 最強の証しだ。陵侑は、ジャンプ発祥の聖地・ホルメンコーレンで欧州勢以外で初の総合王者となり「僕的には一番でかい。五輪よりもでかいかもしれない」とかみ締めた。好飛躍の目安となるK点(120メートル)越えを2本そろえ5位。総合を一騎打ちで争ったストッフに、残り5戦で逆転される可能性がなくなった。地元・岩手を襲った東日本大震災から8年の節目に快挙を果たし「8年前を思い出した。すごく成長したと思う」と神妙な表情を浮かべた。

 “呪縛”を解き放った。過去に五輪男子個人種目の金メダリストを輩出した国のうち、W杯総合王者がいないのは91年に解体したソ連を除けば日本だけだった。約4か月のシーズン長丁場を戦い、勝ち抜くW杯王者誕生は、真のジャンプ強国へ大切な一歩になる。72年札幌五輪金メダルの笠谷幸生さんは「えらいね。脱帽です。ずっと安定して好成績を残せるのは大したものだ」とたたえた。

 体の特徴を理解し、整えた。陵侑は、何もしないと脚の左右のバランスが崩れてしまうという体質を背負っている。昨春までトレーナーを務めた理学療法士の綿谷美佐子さん(49)は「夏場はトレーニングを積むから左右同じ。でも、冬になると左脚の筋力が弱くなる。シーズン終わりに近づくと、左右差がどんどん出ていた」と明かす。もちろん助走や、空中姿勢はバランスが命。年間通じて結果を出す上で、シーズン終盤の左右差は大きな足かせとなっていた。

 光が差したのは昨季。冬場に左脚だけの片足スクワットなどをこなし、終盤2月の平昌五輪で7位入賞を果たした。今季は新任の入江彩織トレーナー(27)のもと、ヨガ、ピラティスなども導入。「ヨガは自分自身で体の左右のバランスを感じ取るために取り入れた。体のクセを知る、ということです」と入江さん。空中姿勢に早く移れるように靴底を5ミリ厚くし、スキーと靴の間に挟むプレートを5ミリ削る調整もした。「調子だけでなく、ジャンプのレベルが全体的に上がった」と陵侑。繊細なバランスを追求し力強い飛躍を手にした。

 22年北京五輪へ、金メダル最有力の現在の立ち位置を示した。残り3年で、さらに成長できるか。所属で選手兼任監督の葛西紀明(46)も「僕の上のレベルで落ちないようにずっとしていたら、10年くらいトップでいけると思う」と背中を押す。日本男子の誰も入れなかった領域に突入した22歳は「もっとできると思う。僕もこれから変わり続けなければいけない」。達成感に溺れない向上心がある限り、陵侑の大ジャンプは続く。

 ◆小林 陵侑(こばやし・りょうゆう)1996年11月8日、岩手・八幡平市生まれ。22歳。柏台小1年からジャンプを始める。盛岡中央高2年の14年に国体複合優勝。土屋ホーム入りした15年からジャンプに専念。五輪は18年平昌大会で初出場し、個人ノーマルヒル7位、ラージヒル10位。今季は昨年11月のW杯個人第2戦でW杯初勝利を挙げ、伝統のジャンプ週間で史上3人目の4戦全勝優勝。兄の潤志郎はW杯1勝で姉の諭果と弟の龍尚もジャンプ選手。173センチ、60キロ。

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