羽生結弦、右足首負傷から復活宣言「勝ちたいという欲求が煮えたぎっている」

スポーツ報知
公式練習を終えて記者会見に臨んだ羽生結弦の表情は、自信に満ちあふれていた(カメラ・相川 和寛)

◆フィギュアスケート 世界選手権 公式練習(19日・さいたまスーパーアリーナ)

 フィギュアスケートの世界選手権は20日にさいたまスーパーアリーナで開幕する。右足首の故障明けで4か月ぶりの実戦となる五輪連覇の羽生結弦(24)=ANA=が19日、初練習を行った。3221人のファンが見守った本番リンクでループを含む3種類の4回転ジャンプに挑み、13本中12本成功。成功率90%超えの絶好調王者が「100%といえる状態」で2年ぶり3度目の優勝へ向かう。男子ショートプログラム(SP)は21日、フリーは23日に行われる。

 4か月ぶりに上がった競技会の氷上で、羽生は思う存分、炎を燃やした。試合に出られなかったつらい時期を乗り越え立った決戦の地。視線を上に向け、アリーナを見渡しながら1周した。

 「油はあるし火もあるんだけど、小さい部屋の中でずっと燃えているような感じだった。今は大きな箱の中で光って暴れ回る炎になれている。勝ちたいという欲求が煮えたぎっている」

 本番リンク35分の練習でループ、サルコー、トウループの3種類の4回転を13本中12本成功させ、右足首の不安を一蹴した。

 ゆっくりと滑りながら氷の感触を確かめると、開始8分で軽めの助走から3回転ループ。徐々にギアを上げ、羽生らしい完成度の高い4回転を次々と降りていった。会見では「胸を張って、100%といえる状態」と言い切った。4回転トウループ―3回転半ジャンプ(トリプルアクセル)の大技も見事に決めた。「今日このメインリンクでやりたかったこと、感じたかったことを一つ一つ感じることができた。それに関しては全て、ミッションコンプリート」。夕方はサブリンクで汗を流した。

 11月のロシア杯のフリー当日の公式練習で右足首を負傷した。年明けから氷上練習を再開。故障の原因となったループは3週前に「50本に1本跳べるようになったくらい」という状態から、構成に戻せるまでに精度を上げてきた。同じく右足首の故障明けで迎えた平昌五輪では回避した大技は「五輪の時と違って跳ばなくてはいけないという使命感が強くある」。4回転はSP2本、フリー4本の計6本で挑む予定だ。

 今大会は公式練習のチケットが3500円で販売された。3221人のファンが見守るなか終えた初滑りは、王者の貫禄にあふれていた。「今季の自分が演技してきたものや、練習も含めた上で全ての自分に勝ちきれる演技をすることが一番の目標」。2年ぶり3度目の頂点へ、ライバルは自分自身だ。(高木 恵)

 ◆ユヅに聞く

 ―14年に世界選手権を初制覇した時のリンクだ。

 「非常に気持ち良く試合に臨めている」

 ―優勝した平昌五輪前にも右足首を負傷。当時の経験は生きた?

 「うまく生かせた。どう試合に向けて気持ちをつくっていけばいいのか、どう日々を過ごしていけばいいか、けが明けがどれほど苦しいかも経験した上での今回になる」

 ―故障後の練習過程は。

 「一つ一つの完成度を上げる練習から始めて、右足首の強度を上げつつ。ループに耐えうる筋力もつけるようにした」

 ◆羽生の右足首故障からの経過

 ▼18年11月17日 GPロシア杯フリー当日の朝の練習中に4回転ループで転倒し、右足首を負傷。

 ▼11月29日 GPファイナル欠場を発表。日本での精密検査の結果は右足関節外側靱帯(じんたい)損傷、三角靱帯損傷、右腓骨(ひこつ)筋腱(けん)部分損傷。3週間の安静固定、その後リハビリ加療に約1か月を要する見込みと診断された。

 ▼12月13日 全日本選手権欠場を発表。「一日でも早く痛みや制限がなくなり、競技に復帰できるよう努めてまいります」

 ▼12月24日 実績を考慮し、世界選手権代表に選出。

 ▼19年2月20日 日本スケート連盟を通じ「年が明けてから氷上練習を始めました。ジャンプについては世界選手権に向けて調整しています」とコメント。

 ▼3月18日 拠点のトロントから日本へ。120日ぶり公の場。

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