流行語大賞ノミネートの「うつヌケ」「睡眠負債」「ワンオペ育児」って何?

2017年11月18日13時0分  スポーツ報知

 「現代用語の基礎知識 選 2017ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート30語が、9日に自由国民社から発表された。「空前絶後の」「ちーがーうーだーろー!」などニュースやバラエティー番組でおなじみになったフレーズが並ぶ中で、やや見慣れない言葉も選ばれているのではないだろうか。今回はそうした「語」について調べてみた。「うつヌケ」「ワンオペ育児」って何? 知っていた、という方はトップテンおよび年間大賞発表(12月1日)の前に、おさらいとしてどうぞ。(芝野 栄一)

 ◆「うつヌケ」って?

 「うつヌケ」とは、「うつ」を「ぬけた」という意味だ。うつ病から脱出したサラリーマン兼業の漫画家・田中圭一さん(55)が、苦悩の日々を振り返り、柔らかいタッチで描いたドキュメンタリーコミックのタイトル。それが今年の新語・流行語としてもスポットを浴びた。

 玩具会社などで働きながら、ギャグ作品「ドクター秩父山」やパロディー作品で漫画家としても活躍していた田中さんは、2005年頃から「原因不明のつらさ、恐怖と不安」を感じるようになり、一時は自殺すら考えた。そこから10年近くかけ少しずつ回復していった様子を描いた作品を、14年から「文芸カドカワ」誌に連載。今年1月に単行本(1080円)が発売され、電子版を含めて33万部のヒットとなった。

 田中さんが自ら考え、タイトルとしたのが新語の「うつヌケ」だという。出版元のKADOKAWAに企画を持ち込んだ時から名前は決めていた。同社編集担当の菊地悟さんは「分かりやすい4文字のフレーズなので、覚えやすいと思いました。単なる商品の名前でなく、言葉自体を一般に広めたいという気持ちもありました」と振り返る。

 気分の落ち込みや不眠などに悩まされ続けるうつ病は、生涯で15人に1人程度の日本人が患うとするデータもあるが、様々な誤解を受けることも多い。「うつヌケ」がノミネートされた背景について菊地さんは「多くの人がうつ病を『ひとごとでなく、自分も知っておいたほうがいい病気』と感じているからではないか」と分析する。

 作品にはロックバンド「筋肉少女帯」のボーカル・大槻ケンヂら、田中さんと同様の病を克服した著名人らも登場する。全編を通じ田中さんは「大丈夫…。うつはそのうち必ず治る」と、悩む人たちに寄り添うように訴えている。反響も大きく、同社には「この本で救われた」という感謝の言葉が多数寄せられた。「(紙の)手紙で、わざわざお礼を書いていただいた読者の方も目立ちました」という。

 現在、電子書籍事業を展開する会社に勤めながら、京都精華大マンガ学部で教壇にも立つ田中さん。「『うつヌケ』が選ばれたことはたいへん光栄ですが、それだけ『うつ』への関心が高まっているということでもあります。平和で便利な世の中にあって、心を病む人が増えている。本当に不可解です。なので、これを機会に本書がより多くの悩める人に届いてくれればありがたいと思います」と願っている。

 ◆「睡眠負債」って?

 言葉の響きからして、良い意味ではなさそうだが…。これは、睡眠不足が蓄積されて、心身に悪影響を及ぼすことを意味する。もともと欧米の研究者が提唱していたが、6月にNHKの報道番組で取り上げられて広まったとされる。睡眠不足を感じていなくても、わずかに足りない睡眠時間が積み重なることで、病気のリスクが高まるという。

 睡眠教育セミナーなどを開催している日本眠育普及協会の橋爪あき代表は「日本は世界一の短眠国家」と指摘。「今回のノミネートで、睡眠に無関心だった社会がやっと関心を持つきっかけになる」と評価した。

 橋爪代表は睡眠不足解消とともに、質の重要性も訴える。「まず睡眠について正しい知識を学ぶことが肝心。生活習慣を見直し、夜だけでなく昼の生活から正して体内リズムを崩さないことが大切」とアドバイスした。

 ◆「アウフヘーベン」って?

 今年、総選挙などいろいろと話題になった小池百合子都知事が引用した語。ドイツの哲学者・ヘーゲルが弁証法の中で提唱した概念で、「止揚」と訳される。小池氏が自身の政策を説明する際に「いったん立ち止まって、より上の次元に」という意味で多用した。

 ◆「けものフレンズ」って?

 1月から3月までテレビ東京などで放送されたアニメ作品のタイトルが、そのままノミネート。舞台は動物を擬人化した「フレンズ」という少女たちが暮らす架空の動物園「ジャパリパーク」。そこに迷い込んだ少女が仲間の居場所を知るために冒険する様子を描いた。テレ東広報部は「話題の賞にノミネートしていただき、うれしく思っております」とコメント。

 ◆「ワンオペ育児」って?

 そもそも「ワンオペ」という語は、14年の新語・流行語大賞のノミネート50語に選ばれていた。「ワン・オペレーション」の略語で、深夜など人手が不足する時間帯に飲食店、コンビニなどが従業員1人で店を運営する勤務方式を指す。そこにつけ込んだ強盗事件が多発したことから社会問題としてとらえられた。その語から派生した「ワンオペ育児」は、何らかの事情で育児を夫婦どちらかが、一人でこなさなくてはならない状態をいう。

 家事の分担を推進しているNPO法人tadaima!の三木智有代表は「昔は『男性は仕事、女性は家庭』という考えが当たり前でしたが、今はそんな時代ではない。政府が主導して女性活躍を促しているくらいですから、夫婦で家事のシェアは当然。それなのに『ワンオペ育児』という語が選ばれた。それだけその状態に悩んでいる女性が多いという証しで、ある意味残念です」と話した。

 ワンオペ状態の解消について、三木代表は「いかに女性の不公平感をなくし、家事のプレッシャーから解放してあげることが重要」と強調している。

 

 ◆デーブ・スペクター氏「いろいろ考え直す時期来てる」

 放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏が今年の新語・流行語大賞について分析などを語った。

 「大賞は忖度(そんたく)しかないよね。もう“ふりがな”を外してもいいくらいなんだから。でも、最近、この賞は授賞式のためにやっているようにみえるね。有名人に来てもらって盛り上げようと…。だから流行しても式に来る人がいないような不謹慎な言葉は選ばれにくい。忖度も(流行のきっかけのひとつになった)学園の理事長が式に来るはずないから、ムリじゃないかな。ノミネートの発表の時期も早すぎるよ。以前(2011年)に、大ヒットしたドラマ『家政婦のミタ』で主人公が使った『承知しました』は流行したけど選ばれなかった。10月から放送が始まったからですよ。いろいろ考え直す時期が来ているんじゃないかなぁ」

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