藤井四段フィーバー、“飛”躍の1年…とに“角”すごかった

スポーツ報知
将棋ブームをリードした藤井聡太四段

 今年6月、史上最年少棋士・藤井聡太四段が14歳11か月の若さで、公式戦歴代新記録の29連勝を樹立した。「藤井フィーバー」は新語・流行語大賞にもノミネートされ、まだあどけない中学3年のニューヒーローは日本列島に空前の将棋ブームをもたらした。また、史上初の永世7冠となった“元祖天才”羽生善治竜王(47)に対し、政府は囲碁の井山裕太7冠(28)とともに国民栄誉賞の授与を検討中。昨年、スマートフォン不正使用疑惑騒動で揺れた将棋界に、明るい光が差した1年だった。

 昨年10月、三浦弘行九段(43)にスマホ不正使用疑惑が浮上。後に“無実”と判断されたが、将棋界に漂う不穏な空気を一変させたのが、史上最年少棋士・藤井四段だった。

 昨年12月24日、「ひふみん」こと加藤一二三・九段(当時76)との対局でデビュー。“年の差62歳対決”を14歳が制した。ひふみんは「私が5戦目の相手だったら、そんなに注目されなかった。一番いい時に対局して、負けた」と振り返ったが、話題性十分のプロ初戦を飾ると、注目度は対局を重ねるごとに増した。

 白星街道をばく進し、6月に史上最多の29連勝を達成。わずか14歳11か月での快挙は1996年、25歳で史上初めてタイトル全7冠を独占した“羽生ブーム”をもしのぐ熱狂をもたらした。例年はタイトル戦でも10社に満たない報道陣が、藤井四段の連勝時は、ワイドショー、一般週刊誌も含め、30社以上であふれ返った。

 新・天才の活躍は、確実に将棋界を活性化させた。「将棋を覚えたいという子供たちがグンと増えた。3000円ぐらいの将棋盤、駒が全国的に売り切れているんです」と、ひふみんも藤井効果を説明する。また、中継をネットで観戦する「観(み)る将」なる将棋ファンも増加。藤井四段グッズもバカ売れ。対局の休憩時に食す“勝負メシ”もワイドショーで報道された。

 将棋連盟関係者は「さすがにブームも落ち着いてきたが、せっかく吹いた追い風。どう定着させるかが我々の課題」と頭をひねるが、ひふみんは「羽生さんの国民栄誉賞が決定すれば、さらに盛り上がります。藤井四段も順調に行けば(順位戦C級2組を勝ち抜いて)来年3月、五段に昇段するはず」と予言。勢いをキープできるか―。(筒井 政也)

 ◆将棋界この1年
 ▼1月18日 三浦弘行九段のスマホ不正使用疑惑騒動の責任を取り、谷川浩司日本将棋連盟会長が辞任を発表。
 ▼2月2日 2016年の獲得賞金・対局料ランキングが発表され、羽生善治3冠が9150万円(推定)で3年連続22度目のトップ。
 ▼2月6日 佐藤康光九段が日本将棋連盟新会長に。
 ▼2月20日 ポーランド人のカロリーナ・ステチェンスカ女流3級女流棋士が女流2級に昇級。男女通じて初の外国人棋士に。
 ▼4月4日 藤井聡太四段がデビューから11連勝を達成し、新人記録を更新。
 ▼5月20日 人間VSコンピューターの「電王戦」ラスト対局で、佐藤天彦名人がソフト・PONANZAに敗れる。「叡王戦」がタイトル戦に昇格すると発表された。
 ▼5月24日 スマホ不正使用疑惑の三浦弘行九段に不正はなかったと認められたことで、日本将棋連盟が慰謝料を支払うことで合意、和解したと発表。
 ▼6月20日 加藤一二三・九段が竜王戦6組の昇級者決定戦で敗れたため、この日付で現役を引退。63年の棋士生活に幕。77歳5か月は棋士史上最高齢。
 ▼6月26日 藤井聡太四段が14歳11か月の若さで、公式戦29連勝の新記録を樹立。1986―87年度の神谷広志五段(現八段)の28連勝を30年ぶりに更新。7月2日に初黒星を喫し、記録はストップ。
 ▼8月30日 菅井竜也七段が羽生善治3冠を破り、初タイトルの王位を獲得。
 ▼10月11日 中村太地六段が羽生善治2冠を破り、初タイトルの王座を獲得。
 ▼11月9日 「2017ユーキャン新語・流行語大賞」で「藤井フィーバー」「ひふみん」が候補入り。
 ▼12月5日 羽生善治棋聖が通算7期目の竜王を獲得。「永世竜王」の資格を得て、史上初の「永世7冠」を達成。
 ▼12月13日 政府が、羽生善治永世7冠と囲碁の井山裕太7冠に国民栄誉賞を授与する方針を示す。

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