“地球最大の動物”シロナガスクジラ日本初漂着…母親とはぐれて餓死か
神奈川県鎌倉市の由比ガ浜海水浴場近くの海岸で5日に漂着しているのが見つかったクジラの死骸は、シロナガスクジラだったことが6日、国立科学博物館の調査で分かった。同館によると、国内の海岸に打ち上げられたのは初。生態を知る貴重な資料になるとしている。死骸は体長約10メートルで生後数か月程度の子どもとみられる。一般財団法人日本鯨類研究所顧問で鯨類生態学が専門の加藤秀弘さんは「乳離れする前に母親とはぐれて餓死した可能性が高い」と指摘した。
地球最大の動物と言われるシロナガスクジラが漂着したのは、海水浴客でにぎわう由比ガ浜の西端。江ノ島電鉄長谷駅の南西約1キロだ。無残に力尽きた巨体を見ようと人だかりができ、多くの人がカメラ付き携帯電話で撮影した。
巨体とはいえ、生後数か月の子どもだ。重さは不明だが、加藤さんは「異常なほどにやせていますね。母親から乳をもらっていればこんな状態にはならない。数週間前に沖合ではぐれたのでしょう。食べ物がなくて死亡したのは、そんなに前ではないと思います。数日前ではないでしょうか」と推察した。
北半球のクジラの繁殖期は12月から1月。低緯度地方で約7メートルの幼獣を出産する。授乳期間は6~8か月。夏場はロシア東部のカムチャツカ半島からアリューシャン列島にかけての海域から餌のオキアミを求めて北極海へ向けて北上していくという。
「クジラは面倒見がいい方ですが、それでもはぐれてしまうことは珍しくありません。30%ぐらいは授乳中に死んでしまう。シロナガスクジラの個体数は減っていて、正確な調査もできないのですが、北太平洋には数千頭といったところでしょうか」
由比ガ浜のシロナガスクジラは6日午後2時ごろ搬入された重機で解体され、トラックに積み込まれた。今後は胃の内容物やDNA型などを調べた後、骨格標本にする方針。国立科学博物館で海棲(かいせい)哺乳類学の研究主幹である田島木綿子さんは「100年以上前の文献にはあったが、実際に国内でシロナガスクジラの漂着が確認されたのは初めて。あらゆる調査をして生態を探りたい」。世界的にも漂着は珍しい。
朝から様子を見守っていたという近くの小学4年生、佐藤碧(あおい)さん(10)は「初めてクジラを見てびっくりした。赤ちゃんのクジラがお母さんと離れて死んでしまったのは悲しいと思った」と話していた。
◆今年の日本でのクジラの打ち上げ
▼1月7日 沖縄県東村の浜辺で、体長約8メートルのザトウクジラの死骸が。生後1~2年とみられる。
▼2月20日 青森県横浜町の海岸で、体長約5メートルのオオギハクジラの死骸が見つかる。
▼5月19日 沖縄県名護市の海岸で、背中に血を流している体長約5メートルのコビレゴンドウクジラが。水族館関係者らが6時間かけて沖へ戻す。
▼5月29日 青森県八戸市の砂浜で、体長約5メートルのミンククジラの死骸が漂着。
▼7月17日 静岡県湖西市の海岸で、体長約4メートルのイチョウハクジラ1頭の死骸が見つかる。生息域がまだあまり知られていない珍しい種類だといい、地元博物館などが解剖。