銚子電鉄の「まずい棒」が大人気、竹本社長「真剣にふざけていきたい」

スポーツ報知
お化け屋敷電車の前で「まずい棒」をPRする竹本社長

 銚子電鉄が売り出したスナック菓子「まずい棒」(1本50円、税込み)が大人気だ。今月3日の発売初日から2日間で初回入荷分の1万5000本が完売した。名前に「まずい」がついているが、おいしいと評判だ。この夏は「まずい棒」以外にも「お化け屋敷電車」や銚子電鉄の各駅にあるミッションをクリアしていく「銚子電鉄えきクエスト」など、面白いイベントが用意されている。これらのイベントを次々と生み出す同社の竹本勝紀社長(56)に話を聞いた。(高田 典孝)

 8月3日18時18分、銚子電鉄犬吠(いぬぼう)駅で「まずい棒」の販売が開始された。この日時には意味がある。「8(ハ)3(サン)18(イヤ)18(イヤ)」という竹本社長の思いを込めた語呂合わせだ。当日、犬吠駅には大勢の人が集まり、「まずい棒」は飛ぶように売れた。2日間で初回販売分の1万5000本が売り切れた。8日にも7000本用意したが、これも即日完売。次回は今日18日と25日に販売する予定。9月中旬からは、インターネットで全国発売するつもりだ。

 銚子電鉄は銚子駅と外川(とかわ)駅を結ぶローカル線。銚子市内6・4キロを10駅で結ぶ。しょうゆメーカーの社員の足として昭和20~30年代には、年間240万人の乗降客がいた。しかし、その後は年を追うごとに減り、最近では全盛期の6分の1、約40万人にまで激減した。

 「同じようなローカル線は、第三セクター方式になり、自治体の援助が入ることが多いです。しかし、ウチは全て自前。安全輸送のために線路や車両の保守点検をしなければならないのです。これにお金がかかる」と竹本社長。そこで同社は、1995年からサイドビジネスとしてぬれ煎餅の販売を開始した。ぬれ煎餅は人気になり、一時は経営も好転したが、2011年の東日本大震災の影響もあり、再び状況は悪化した。

 そこで今回「まずい棒」を売り出すこととなった。「ネーミングは『経営がまずい状態』からつけました。決して味がまずいわけではありません」と竹本社長は説明する。肝心の味は、サクッとした食感と、コーンポタージュの甘い味わいでおいしいと評判は上々だ。

 「まずい棒」販売のほかにも、この夏には「お化け屋敷電車」や「銚子電鉄えきクエスト」など、ユニークなイベントが用意されている。「ウチの路線には絶景があるわけではありません。なので、乗って楽しい電車にしなければならない。生き残るためにはいろいろ考えてイベントをやらなければならないんです」と竹本社長は率直に話した。

 「銚子電鉄を残すことが大切なんです。そのためにはエッジを利かせたアイデアで興味を引き、意表をついたことを行いたいと思います。真剣にふざけていきたい。苦しい時こそ笑って楽しみたい」という。竹本社長の目標は、銚子電鉄を日本一のエンタメ鉄道にすることだ。「ライバルは東京ディズニーランドです」と真剣なまなざしで言い切った。

 ◆今年で4年目、怖さレベルアップ「お化け屋敷電車」

 銚子電鉄は今年もお化け屋敷電車を走らせる。日本初の走る電車内でのお化け屋敷を体感するイベントで、今年で4年目。怪談収集家の寺井広樹さんがプロデュース、全国のお化け屋敷を手掛ける丸山工芸社が制作協力している。お化け役には地元の大学生や高校生が参加している。「毎年、怖さのレベルが上がっています」と竹本社長が胸を張る夏限定のイベントだ。

 毎年、テーマが変わる。今年は「銚子怪談2018~傀儡子(くぐつ)の呪い人形~」と題して「呪い人形」がテーマ。物語は、銚子のある村で起こったことから始まる。その村では傀儡子があやつる「呪い人形」を見た人は生きたまま吊(つ)るされるという言い伝えがある。呪い人形は濡(ぬ)れた長い髪をしていたことから「濡れ人形」とも呼ばれていた。その村で曾野子(そのこ)という傀儡子の女性が海で水死体となって引き揚げられたことと、濡れ人形との関係は? 物語はかなり本格的だ。

 参加者は犬吠駅に集合。まずそこでお化け屋敷に入り、ミッションをクリアしてから電車に乗り込む。そこから約50分、下車することのできない電車の中で、参加者にはさまざまな恐怖が襲いかかる。逃げ場がないだけに、その恐怖は倍増する。銚子電鉄の電車は、車両がレトロな雰囲気なだけに、お化け屋敷にぴったりだ。

 チケットは大人2700円、中・高・大学生2000円、小学生1500円、未就学児(4歳以上)1000円(以上税込み)。代金には銚子電鉄の一日乗車券や、犬吠駅内のお化け屋敷入場券、ぬれ煎餅手焼き体験代、たい焼き1個引換券と銚子電鉄らしいお土産がついている。

 今後の運行予定は8月18、24、25、26日で18時40分集合、20時集合の一日2便。チケットは同社HP(https://choden‐horakatsu.com)のみの販売になる。

 ◆スマホでミッションに挑戦

 「銚子電鉄えきクエスト」も楽しいイベントだ。銚子電鉄に乗りながらスマートフォンアプリを使って各駅から街歩きをし、その駅で観光案内を受けたり、ミッションに取り組んだりする。ミッションは各駅からスタートし、その場所にまつわる地理や歴史、各種うんちくに関するクイズや、アプリ上での証拠写真撮影などがある。参加方法は一日乗車券(大人700円、小人350円=税込み)を買って、アプリ「YORIP」をインストール。「銚子電鉄えきクエスト」のシナリオを獲得してからスタート。ただし、このアプリを利用できるのは現時点では、iPhoneシリーズだけとなっている。

社会