東京オリンピック・パラリンピック、おもてなしの心で会場を「クール」に…小林春彦の「花も実もある根も葉もない」

2018年9月11日15時0分  スポーツ報知
  • 小林春彦

 小林春彦です。身体機能と脳機能に重複障害を抱える中途障害者です。スポーツ報知からは初投稿となります。かねて「報知さんで書くよ」と関係者に吹聴しておりましたが、すっかり初稿が遅くなりました。別に原稿執筆のギャラが安かったから仕事として後回しにしていたわけではありません。誤解です。

 冒頭に読者置き去りの言い訳を存分にしたところで、東京オリパラ2020の開催まで2年を切り、どれくらい世間は盛り上がっているんだろうねと気になりまして、原稿を書く気になってきました。

 そこで全国の16~79歳の男女1万1217人を対象とした「東京オリンピック・パラリンピックに関する意識調査(インテージリサーチ)」をのぞいてきました。 まず大会を生で観戦しようと考えている人はどのくらいいるのでしょうか。1964年の東京オリンピック入場券は異常な人気で、見込みよりおよそ1.5倍も売れダフ屋まで現れたと聞いています。

 ところが本調査によると、自国開催にもかかわらず競技を「会場で観戦したい」人の割合は23.9%、首都圏ですら33.9%となっています。中でも「テレビで観戦したい」が最も多く、73.2%にのぼりました。今はフルカラーだもんな。地デジだもんな。白黒ブラウン管の時代はとうに過ぎた。さて本当に問題はそれだけでしょうか。

 おそらく私に限らず出場選手や観戦者の誰もが思っていることは、我が国の夏は暑いんだよ、というストレスです。今年の夏は、熱中症で多くの方が子供から老人まで亡くなりました。猛暑とは、豪雨暴風、地震、津波、噴火に並んで人を死に追い詰める、自然災害なのであります。

 もう大会を昼間にやると暑くて死ぬから、一日の中で一番涼しい真夜中に全競技をやればいいと思うんですよね。今年の夏の高校野球地方大会でも、出場選手が脱水症状をともなう熱中症で歩行困難になり、「酷暑の激闘で体は限界だった」と救急車で東京都内の病院に救急搬送されましたが、俺たちも苦労したからお前らも苦労しろ的な負の伝統は見直すべきだと思います。

 「東京オリンピック・パラリンピックの開催を通じて期待する変化(※いくつかの選択肢が用意されており複数選択可)」調べでは、「国内の消費が活性化する」という回答が上位に来ている一方、「東京オリンピック・パラリンピックに向け、またはその期間中何に対して支出したいか」という問いには「通常以上の支出はしないと思う」と回答した人が66.5%と、群を抜いて多い結果となっています。

 日本経済の活性化は望むけれど自ら積極的に支出しようとは思わない、消費の活性化は外国人観光客頼み、という他人任せの臭いがする。

 大々的に喧伝(けんでん)されてきたクールジャパン政策も投資事業が迷走中と報じられていましたが、せっかく日本へやってきた外国人が、バタバタと熱中症で倒れていくようでは、やっぱりヤバイと思うんですよね。まずは頭を冷やし「おもてなしの心」で会場をクールにすることから考えてみるべきではないでしょうか。

 ただ、40歳代以下の男性を中心に「個人、家族、友人・知人で観戦するための、テレビやモバイル端末」「パブリックビューイングに参加するための費用」「個人、家族、友人・知人で観戦するためのAR、VR機器」など、新しい観戦スタイルに関連した消費の意向が高まっており、一部の商品・サービスでは消費の盛り上がりの兆しが見えそうです。

 現代社会は利便性を追求するあまり人との接触が少なくなり人間同士の接触が希薄になってきている、人間的な幸福が失われているかもしれない系の議論がありますが、そもそも論として、こんなクソ暑い中観戦に出て行って汗水たらし熱中症になるくらいなら、クーラーの利いた部屋で気の合う仲間と一体になってTV付けて応援したいよね、となるのは自然だと思うのですよ。生きてこその人生、その上に立つ幸福。

 また同じ調べでは、「選手の活躍や頑張る姿を見て感動できる」という回答が最多の35.5%となり、特に 50歳代以上の女性で多くなっているようです。この「選手の活躍や頑張る姿を見て感動」、というフレーズに障害を持つ私が(アスリートではないけれど)思いをはせるのは、パラリンピック選手が「障害者」と「アスリート」の2つの区分に属すということへの重荷です。

 おそらくパラリンピックの選手は、障害者に対する「できないことがある弱者」「清い人」というイメージと、アスリートの「身体機能を高めた強者」「清い人」という一見相反するイメージの中に、「清い人」という共通項があり、「こうであるべき」という強烈に潔癖なレッテルをマジョリティーに押し付けられるでしょう。そして凝縮された時間、人目を引く環境でキャリアを送ったアスリートの、障害者として引退後も生きていくことの難しさを想像するわけです。このあたり今後、個人的にも丁寧に一人ひとり取材していきたいと思っているテーマです。

 皆さんは来たる東京オリンピック・パラリンピック2020に、どんな思いでいますか。東京は暑いけど。

 ◆小林 春彦(こばやし・はるひこ)1986年12月17日、兵庫・神戸市出身。障害者タレント専門芸能事務所「Co―Co LIFE(ココライフ)タレント部」所属(エージェント契約)。高次脳機能障害・視野狭窄・左半身まひ。白杖と、左手に白い手袋を着用。私立三田(さんだ)学園中学・高等学校卒。「見えない障害」の問題を訴える渾身の著書「18歳のビッグバン 見えない障害を抱えて生きるということ」を2015年に上梓。見通しの利かない未来に対し光明を放ち奔走する、話題の論客。

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