「吉野家一号店」ファン殺到!“聖地”牛丼に別れ…築地市場、6日83年の歴史に幕

スポーツ報知
築地一号店限定の緑色の丼で供された「アタマ大盛・ネギダク」

 東京・中央区の築地市場が6日正午、取引を終了し、83年の歴史に幕を閉じる。豊洲市場(江東区)移転に伴い、「吉野家 築地一号店」も同日にラストデーを迎える。現存する吉野家最古の店舗で、“裏メニュー”もあるためファンから「聖地」と呼ばれる同店には5日、閉店を惜しむ客が殺到。長蛇の列ができた。豊洲市場開場の11日に新たに「豊洲市場店」がオープン予定。関係者は築地一号店の味を継承していくことを誓った。(増田 寛)

 ついに築地での長い歴史に幕が下りる。「もうあの味を食べられないかもしれない―」。この思いが、午前5時から午後1時の限定8時間の営業時間で、15席しかない“聖地”に客を殺到させた。正午には50人が並び、30分待ち。生まれながらの吉野家ファンを自負する、運送業経営・曳田太一さん(38)は「家族全員で新潟から朝8時の新幹線で来ました。6日の最終日、開店から行けるように宿も取りました」と意気込む。一方で「一号店がなくなるのはさみしいですね」と顔を曇らせた。

 1899年、東京都中央区日本橋にあった魚市場に個人商店として吉野家が誕生。関東大震災(1923年)で焼失した魚市場が26年に築地に移転したのに伴い、店も同地に移った。35年に築地市場が開場。その後、45年3月10日の東京大空襲により店が焼失。59年、今の店舗に落ち着いた。

 いつも店をひいきにしてくれた常連客を、いつの時代も忘れたことはない。市場内という場所柄、客の大半は常連だ。厨房(ちゅうぼう)で丼を作る代々の店長は客の顔を覚え、好みの牛丼を提供してきた。脂身(トロ)が多い肉だけを盛りつける「トロダク」など一号店独自の裏メニューも存在する。現在の店長・原田和樹さん(30)は200人の好みを把握しているという。閉店を惜しむ客が連日、列を作ったことから、4日の通常営業終了後、常連のみの貸し切り臨時営業を行った。

 一号店がなくなるからといって、その味が消えることはない。原田さんは「同じ味を継承したい。一つでも多くの歴史を継承したい。次の豊洲でも新しい店長がやってくれます」と力強く語った。5日に加え6日も混雑が予想されるため裏メニューは取りやめるが、11日に開店する豊洲市場店では継続する。

 「築地同様に、市場関係者においしい牛丼を提供する。それだけです」と株式会社吉野家企画本部広報課長の寺澤裕士さん(42)。豊洲市場で、吉野家の新たな歴史が幕を開ける。

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