フランス抗議デモが暴徒化…スポーツ報知記者がパリで“遭遇”「ゾッとした」

スポーツ報知

 フランスで温暖化対策として実施された燃料税引き上げなどに抗議するデモは1日、パリ中心部で暴動となり、警察官を含め133人が負傷、410人以上が拘束された。凱旋門は落書きだらけとなり、近くにあるマリアンヌ像の一部は破壊された。バーチャルシンガー・初音ミクの欧州ツアーのパリ公演の取材のため同地に滞在していた斉野民好専門委員が「見た」。

 遅い夏休みを兼ね、初音ミクのパリ公演(1日)取材のため、11月29日から同地に滞在していた。“異変”の知らせは「たびレジ」からのメールだった。たびレジとは、外務省による短期旅行者を対象とした登録システムで、登録した滞在先の緊急情報や安全情報をメールで受け取れるシステムのこと。

 30日の昼過ぎに受け取ったメールには「11月17日以降、毎週末に燃料価格高騰に対するデモが行われている」「シャンゼリゼ通りではその一部が暴徒化」「12月1日はデモ参加者と治安部隊が衝突する可能性」など、物々しい文面が躍っていた。メールの内容を裏付けるように、同日、見物に訪れた凱旋門やシャンゼリゼ通りには、ベレー帽と分厚い防弾チョッキ、迷彩服に身を包み、軽機関銃を手にした兵士の集団がそこかしこにあふれていた。

 「君子危うきに近寄らず」、1日は夜のミクのライブまではシャンゼリゼ周辺を避けて行動することにした。パリ市内の移動はもっぱら地下鉄を利用していたが、この日は勝手が違った。各駅停車しかない地下鉄が、アナウンスなしに乗り換えを予定していた駅を次々と通過していく。乗った電車が突然、運転取りやめになることもあり、頼りにしていたスマホアプリのグーグルマップもまったく役に立たない。おかげでお土産を買う予定のオペラ座近くの雑貨屋まで、延々と地上を歩く羽目になった。不思議だったのは車内の乗客の様子がいたって“普通”だったこと。家族連れもカップルも、トラブルなどなかったかのように週末を楽しんでいるように見えた。

 市内観光を早々に諦め、パリ郊外で開催されるミクのライブ会場に向かった。こちらはデモの影響は皆無。ミクファンのパリっ子の取材中、偶然、フランスを中心に活動する日本人のフリージャーナリストに出会った。昼間はデモの様子を取材していたそうで「現場は小競り合いが続いて騒然としていた。周囲に漂う催涙ガスの影響で涙が止まらず、目、鼻、口を押さえて逃げまどう人々を見かけた」と話していた。

 地図で確認すると、このデモの現場と記者が立ち寄った雑貨屋までは1・5キロしか離れておらずゾッとする一方、平穏な日常と危険な非日常が自然に同居している「花の都」の市民感覚に驚かされた。

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