現役女子小学生がプロ野球球団の選手に…NPB主催の球団対抗戦のeスポーツ大会

スポーツ報知
千葉ロッテマリーンズのチーム「5年☆組~あしんとらず学級~」(前列左から)ほのかさん、ハルさん(後列左から)razさん、あしんさん

 NPB主催でプロ野球球団対抗戦のeスポーツ大会「NPB eスポーツシリーズ スプラトゥーン2」が5月に開催される。人気シューティングゲームの大会で、このほど都内でドラフト会議が行われ、本物のドラフト同様に各球団が参加チームを指名した。2球団競合の末に千葉ロッテマリーンズが指名したチームには11歳の女の子が2人所属。あどけなさが残る天才少女が参加するチームに、入団直前の心境を聞いた。(増田 寛)

 折りたたまれた紙を開いた瞬間、喜びの声がこだました。3月3日に都内で開催されたNPB主催の「NPB eスポーツシリーズ スプラトゥーン2 ドラフト会議」。横浜DeNAベイスターズと千葉ロッテマリーンズの2球団競合の末、ロッテOB・里崎智也氏(42)が当たりくじを引き当て、チーム「5年☆組~あしんとらず学級~」のマリーンズ入りが決まった。リーダーのraz選手(19)は「競合してもらえたこともうれしかったですが、里崎さんのガッツポーズと満面の笑みを見た時は、本当にうれしかった」と喜びをかみしめる。

 プロ野球12球団に所属して、人気シューティングゲームの勝敗を競う同大会。「5年―」は今ドラフトでは2つしかなかった競合に名を連ねたチームの一つ。ジャイアンツ、ホークス、イーグルスの競合となった世界王者「GGBOYZ」(ジージーボーイズ)と双璧をなす人気チームだ。もともと「5年―」はベイスターズを“逆指名”していたが、くじを引き当てたのはマリーンズ。それでもエース・あしん選手(22)は「指名していただいたことがうれしい。ロッテの選手として勝っていくだけ」と闘志を燃やす。

 チームの魅力はなんといってもフレッシュさ。4人チームのうち、あしん選手以外は女性。リーダーのraz選手もまだ20歳になっていない。最大の特徴は今ドラフト最年少選手で現役小学生の、ほのか選手(11)とハル選手(11)を有していることだ。23日に正式な入団発表となるが、入団が確定すれば、現役女子小学生がプロ野球球団の選手として所属するのは初で、歴史的快挙となる。まさに、老若男女に門戸が開かれているeスポーツを具現化したチームだ。

 2人の実力は折り紙付きだ。ほのかは天才小学生ゲーマーとして日テレ系「マツコ会議」(土曜・後11時)に出演したこともある。同ゲームにはステージやその日のルールが時間帯によって決まる予定表があり、その予定表によって、食事時間も家族が変えるほどストイックだ。父が熱狂的な横浜ファンで、チームで一番ベイスターズ入りを希望していたが、「選ばれて安心しました。相手が大人ばかりだけど勝ちたい」。落ち込むどころか、早くも目に闘志をともす。

 ハルは今年1月に行われた大会で惨敗してから、自ら得意武器を捨て、ゼロからのスタートでここまでのし上がった秀才だ。平日は学習塾など習い事があるため、「(平日の)練習時間は30分くらい」。それでもチームの縁の下の力持ちとして欠かせない存在だ。

 ドラフトに選ばれたあと、ネット上では「実力ではなくて、小学生がいるから選ばれた」と批判もあった。だが、あしんは「試合を見てから言ってほしい」と力を込める。リーダーも「前回大会は負けたけど、このような大きな大会に参加する機会をもらえたので、もっと勝ちたい」と意気込んだ。

 狙うは優勝のみ。頂点に立った“ご褒美”に、小さな天才2人はロッテにちなんで「お菓子の家」をおねだり。「チーム4人でお菓子の家でゲームをしたい」と目を輝かせた。5月の本大会の台風の目になるのは間違いない。

 ◆NPBとeスポーツ

 NPBは「野球の普及振興・スポーツ文化の発展」を目的として、2018年からプロ野球eスポーツリーグ「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」を開催。19年には「スプラトゥーン2」で野球以外の分野を開拓。スポーツ文化全体の発展を目指す。

 ◆スプラトゥーン2 2017年に任天堂から発売されたシューティングゲーム。ゲーム機「Nintendo Switch」で遊ぶことができる。15年5月に発売された「スプラトゥーン」に続くシリーズ2作目。累計販売本数は360万本を超える。試合は計8人が2チームに分かれて行うチーム戦。人の姿に変身する“イカ”が、地面や壁などにカラフルな自分のインクを塗り、陣地を自身のチームの色にしていくことが基本プレー。

 ◆NPB eスポーツシリーズ スプラトゥーン2 ドラフト会議

 プロ野球12球団それぞれを代表するチームとして5月18、19日に開催される「NPB eスポーツシリーズ スプラトゥーン2」に出場するチームを選ぶ会議。プロ野球の本場ドラフトさながら、各球団OB選手やマスコットなどが指名を行い、競合の場合は抽選となる。ドラフト候補に挙がっているチームは「第4回スプラトゥーン甲子園」に出場した1000を超えるチームから書類選考、2月開催の選考会を経て18チームが選定された。

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