謎に包まれた北朝鮮の狙いは何か「金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて」を読み解く

2018年4月3日11時0分  スポーツ報知
  • 「金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて」(五味洋治)

 北朝鮮の最高指導者、金正恩朝鮮労働党委員長が1日、李雪主夫人とともに、平壌で行われた韓国芸術団の公演を鑑賞した。チョー・ヨンピルさんや女性アイドルユニットの「レッド・ベルベット」のパフォーマンスを観て拍手を送り、「労働新聞」には出演者らと面談している写真も掲載された。

 4月27日に迎える韓国の文在寅大統領との南北首脳会談へ向け、これまでの緊張感が一気に緩和して来たように見える。首脳会談は1948年に南北が分断されて以降、2度開催されているが、今回金正恩氏が陸路で南北軍事境界線を越えれば、北朝鮮最高指導者が初めて韓国の地を踏むことになる。

 謎に包まれた金正恩氏の真の狙いは何なのか。本当に対話を進めて、北東アジアの平和構築に舵を切ろうとしているのだろうか。北朝鮮については真偽不明な情報が飛び交うが、信頼できる現状分析がされている一冊が先月発売された「金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて」(五味洋治、文芸春秋、1620円)だ。

 著者は、正恩氏の兄・金正男氏(故人)の独占インタビューに成功して脚光を浴びた朝鮮半島情勢の専門記者。バスケットボールが好きで漫画「スラムダンク」を愛読していたスイス留学時代から金正恩氏の素顔に迫り、祖父・金日成主席の代からそのルーツを緻密にひもといた。そして核やミサイルの開発を進めてきた背景や現在の北朝鮮の経済力などを20年以上にわたる取材に基づいて描いている。

 読んで感じたのは、米国や日本が追随した経済制裁は、むしろ北朝鮮の自給自足を促進させ、外国に依存せずにもやっていける体制づくりを助長しているのではないか、ということだ。彼らは簡単には屈してくれない。緊張緩和ムードの演出には、したたかな計算があるはずだろう。(甲斐 毅彦)

 

BOOKセレクト
今日のスポーツ報知(東京版)
報知ブログ(最新更新分)一覧へ