いじめで死なせない…日テレ元キャスターの岸田雪子さんがつづった、11のSOS

2018年8月21日12時0分  スポーツ報知
  • 初の著書でいじめ問題についてつづった岸田雪子さん(カメラ・生澤 英里香)

 日本テレビ元キャスターの岸田雪子さん(48)が、初著書「いじめで死なせない 子どもの命を救う大人の気づきと言葉」(新潮社、1512円)で、いじめを受けた子供のSOSに両親や教師が気づくためのポイントをつづっている。記者やキャスターとして20年以上、いじめ被害者の子供や両親、教師ら200人以上を取材。子供の表情や身の回りの変化を察知し、密なコミュニケーションを取ることが命を救うことにつながると力説した。(星野 浩司)

 岸田さんは日本テレビに入社2年目から20年以上にわたり、部署は変わってもいじめ問題はライフワークとして取材してきた。

 「いじめは特殊なものではなく、子供たちの身近にあるものです。取材の空き時間は学校やフリースクールなどに行って、いじめを受けても生き続けた子供たちの声を聞いてきました。周りで見てた子供たちが本当はどうしたらよかったかという声を聞いて大人が教訓にすれば、次の悲しい事態を防げると思いました」

 文科省が発表した2016年度の小中高のいじめ認知件数は過去最高の32万件を超えた。毎年300人の小中高生が自ら命を絶っている。岸田さんは本書でそのさまざまな具体例に触れた。

 2010年。中学3年の篠原真矢(まさや)くんは加害生徒から殴る、蹴るなどいじめを受け、自宅で薬品を使い自殺。両親は遺書でいじめの事実を知った。

 「篠原さんはSOSを出した時に何もできなかった後悔を感じてました。『今なら絶対死なせない』と。教訓を共有しなければいけない。SOSサインは、微弱な電波のようなもの。例えば、体操着や制服に靴跡があったら親も気づくけど、子供は『組体操で踏まれた』と親に心配をかけたくないからウソをつく。そのウソに親や教師が気づき、いじめを止められるかが被害者の生死につながるんです」

 一方で、親や教師の仕事が多様化する中で子供に寄り添う時間が取りづらくなっていることも指摘する。

 「働き方改革と言われるけど、共働き家庭が増えていてストレスを抱えている親も多いです。また、学校でのいじめの被害者、加害者に対応できる存在の先生が脱ゆとりや英語教育などカリキュラムが増え、過労死ラインを超える長時間労働が増えてる。子供ときちんと向き合うのが難しい社会ともいえますね」

 学校側の対策として、良い事例もある。

 「ある学校は毎朝10分間、いじめ対策の組織メンバーが300人の子供たちの中でいじめで気になる子の情報を共有して、授業ごとに先生が気にしていくという試みをしてる。スクールカウンセラーやソーシャルワーカーらとチームでいじめに対応する学校もあるけど、まだまだ少ないんです」

 いじめを知った親が子供に登校をやめることを勧めることが大切な場合もある。

 「子供は学校が世界だと思ってて、30~40人の社会で毎日過ごす。そこだけが社会じゃないと気づかせてあげるのが大事。親が望むことは子供が学校に通い続けることじゃなく、あなたが笑って過ごせること。学校に行かせたら身体的、精神的に危ない時は『行かなくていい』と言うことで命を救うこともあるんです」

 岸田さんも1児の母として、子供との向き合い方で心がけていることがある。

 「子供も考えや理屈がある。自分の中での答えを子供に押しつけないようにしてます。仮にいじめを知って先生に伝える時も『あの子にいじめられた』ではなく、『あの子の言葉で傷ついたようです』と言えば先生も対応しやすくなるので、学校とのやりとりでは、いじめという単語を使わない方がいいこともあります」

 いじめに気づく「11のきっかけ」を挙げている。

 「持ち物が壊れたり落書きはないか、『どうせ私なんか』と言う、お金の使い方が変わる―。今までと違うことが出てきたら要注意。『いじめられてるんでしょ』ではなく、『何か困ってたら助けになるよ』と優しく伝えるといいと思います」

 昨今、子供の6人に1人は母子家庭など収入が少ない貧困家庭とされる。

 「経済的な貧困に加えて、人との関係性が貧困だとコミュニケーションもしづらくなって悪循環につながります。それがいじめにつながり、犯罪につながることもある。幼少期の家庭環境、関係性の貧困が将来にどうつながっていくのか今後も取材していきたいです」

 ◆岸田 雪子(きしだ ゆきこ)1970年4月2日、東京都生まれ。48歳。早大法学部卒。93年日本テレビ入社。社会部、政治部記者を経て、96年から「NNNニュースプラス1」のフィールドキャスター兼ディレクター。「ズームイン!SUPER」「スッキリ!」で報道デスク、「NEWS ZERO」で報道記者統括担当プロデューサー。2011年から「情報ライブ ミヤネ屋」ニュースコーナーを担当、16年12月に卒業。17年からは報道局解説委員に。同局記者と結婚し、長男の子育てに奮闘中。

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