野球界に何のコネもなかった中溝康隆さんが、独自の視点で描いた「野球を通じた平成史」

2018年8月28日12時0分  スポーツ報知
  • 「村田さん、NPB復帰」を誰よりも願う中溝さん
  • 中溝康隆著「プロ野球死亡遊戯」

 人気ブロガーとして活躍している中溝康隆さん(39)は、ネットの世界から飛び出し、着々と野球ライターへの道を歩み出している。「プロ野球死亡遊戯」(文芸春秋、864円)は昨年、野球コラム企画で日本一になったことを“記念”し、文庫化された。巨人を自由契約となった村田修一(37)については、まるまる1章を割いた。「野球界に何のコネもなかった素人」という中溝さん。スタンドの景色と社会情勢を巧みに織り込んだ“死亡遊戯流野球評論”の世界とは―。(久保 阿礼)

 「死亡遊戯」として知られた人気ブログが文庫になった。ネットの世界から、紙の世界へ。中溝さんはツイッターで時に嘆き、ぼやく。プロ野球についてネット、雑誌、新聞などあらゆる媒体でコラムも書く。

 「自分の好きな試合がネットで見られる時代。だから私もネット、ブログから出てこられたのかもしれませんね」

 昨年、各球団ごとにコラムを書き、アクセスを競うネット企画に参加し、12球団で1位になった。

 「『文春野球』というオンライン上の企画がありまして、アクセスが日本一になったら、『南の島旅行だ~』とご褒美について話していたんです。私は飛行機が苦手だったので、『文春文庫でベストコラム本を出してほしい』と編集者の方に相談しました。昨年12月にゴーサインが出て、作業に入りました」

 内容はほぼ巨人について、だ。ブログを書いた当時と今について、比較した上で追記を書く工夫も凝らした。

 「ブログを読んでいなくて、本から読んだ人も楽しんでもらえるかなと思います。高橋由伸さんが監督になったコラムもありますが、もう就任してから3年です。当時と何が変わったのか追加して書きました」

 これまで集中的に選手や関係者を取材してきたわけではない。だが、外から見た中溝さんの視点は共感を呼んでいる。

 「文庫本は野球本の書棚には並びません。だから、コアになりすぎず、マニアックになりすぎず、を意識しています。野球を通じた平成史のように、社会の出来事、日常も描いていくようにしています。原辰徳の引退は95年でした。このコラムでも、当時の風景をイメージして書きました」

 最初はスポーツ新聞の記者をライバルだと思っていたという。

 「でも、同じような書き方をしていても追いつけませんから。なので、観客席から見た景色を意識していますね。今年は球場で岡本(和真)のユニホームを着ているファンが増えましたし、亀井(善行)さんの人気は変わらずどころか、さらに上昇しています。再復活と言っていい大活躍です。このドラマ感がスポーツのすごいところですよね」

 2014年を最後に巨人は優勝から遠ざかっている。それでも昨年より今年に希望を感じている。

 「今年は故障者がたくさん出て、昨年までならファンは『終わった』と思うんですけど、今年は違います。『球場に行ってみたい』と思う気持ちが去年より高いような気がします。開幕時に想定していたメンツが離脱してしまいました。でも、2位を争っています。ここで底上げできれば、来季はカープを食えるのでは、と期待もしています」

 来季への希望を抱きながらチームを見るのは、巨人ファンにとっては新鮮だという。

 「いつも『優勝、優勝』と言っていたのが、『来季いけるぞ』っていう気持ちです。来年、すごく面白いチームになってそう。だから、来季も由伸監督が指揮する姿を見たい」

 気になる「あの人」については、まるまる1章を割いた。昨季、巨人を自由契約となり、今はBCリーグ栃木でプレーする村田修一だ。

 「2011年オフ、『何で村田さんを獲るのか』という意見が多かった。ラミレス、小笠原と他球団の主力を獲っていましたが、三塁はライアルでした。ブログで『補強ポイントだ』と書いたら、批判コメントが結構、来まして。村田さんってちょっとスキがあるのかもしれません。でも、選手仲間からは慕われてますよね。そんな村田さんの芸術的なゲッツーくらい楽しもうよ、と書いたりしました。V3時代、村田さんはほとんど休んでいない。今の姿からは30代半ばの転職組の悲壮感が漂いますね。プライベートの私も転職したりして、自身の人生も投影させてましたから」

 「愛すべき男」のNPB復帰はならなかったが、栃木での今季最終戦は9月9日、栃木・小山運動公園野球場で行われる。

 「もちろん行きます! あっ、NPBに、これだけは言いたいことがあります。村田さんは昭和感漂う選手かもしれません。でも、スマートなアスリート系ばかりが野球選手じゃない。村田さんをこのまま終わらせていいのか。おっさんパワーを消していいのか。おっさんに冷たいじゃないか、と」

 ◆中溝 康隆(なかみぞ・やすたか)1979年2月15日、埼玉県入間市生まれ。39歳。大阪芸大映像学科卒。デザイナーとして活動しつつ、2010年10月からブログ「プロ野球死亡遊戯」を始め、軽快なタッチの文章とマニアックな知識で人気となる。文芸春秋社のネット野球サイト「文春野球コラムペナントレース2017」で初代日本一に。主な著書に「プロ野球死亡遊戯、そのブログ凶暴につき」(ユーキャン)、「隣のアイツは年俸1億円 巨人2軍のリアル」(白泉社)。

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