【有森裕子コラム】マラソン日本新・設楽悠「練習では30キロ以上走らない」の真意

2018年3月11日12時0分  スポーツ報知
  • 東京都庁をバックに1億円ボーナスの目録を手にする設楽悠太選手

 先月25日に開催された東京マラソンで、設楽悠太選手が16年ぶりに日本記録を更新しました。昨年からコースが変更されて平たんになったことに加え、風や気温などの気候条件が良かったということもありますが、「ようやく記録を出してくれたな」という気持ち。2年後の東京五輪に向けて楽しみになりましたし、期待を持った方も多いのではないでしょうか。

 レース後、さまざまな番組などで設楽選手が取り上げられていますが、それを見ると周囲の声に左右されることなくトレーニングができる強い意志、どのように走れば成績がアップするかを研究する向上心を感じました。練習方法などにも焦点が当たっていますが、覚えておいてほしいのは「報じられたもの」「言葉」が全てではないということ。「1億円ボーナス」というトピックがあり、結果が出たので彼のやり方が「正しい」と伝えられてしまうのかもしれませんが、“説明不足”であることは否めません。

 例えば、彼は「練習では30キロ以上走らない」とコメントしています。これは、これまで常識とされてきた「距離をこなす練習が大切」というものを否定したわけではありません。あまり取り上げられてはいませんが「もっと距離を走りたいという考えもあるが、故障してしまうので」という内容のことも話しているそうです。それを「30キロ以上走らない」という部分だけが殊更注目されると、正確に伝わらなくなってしまいます。

 最近は設楽選手と同じように他の選手も自分のペースや判断で、練習方法などを選択するようになってきたということ。さまざまなケースが生まれてきているのを知ってほしいのです。次は9月のベルリン・マラソンを目指すとのことですが、それまでにまず、負傷した右足をきっちりと治すことが何よりも大切。無理をせず、我慢ができるかどうかが今後のマラソン人生、そして東京五輪に向けて大切になってくると思います。(女子マラソン五輪メダリスト)

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