「男たちの大和」「新幹線大爆破」の名匠・佐藤純彌監督9日死去していた 86歳、多臓器不全

スポーツ報知
9日に亡くなった佐藤純彌監督

 「男たちの大和/YAMATO」、「新幹線大爆破」などで知られる邦画を代表する映画監督・佐藤純彌(さとう・じゅんや、本名同じ)さんが9日、多臓器不全の衰弱のため、都内の自宅で亡くなっていたことが17日、分かった。享年86。東大卒業後の62年、東映で初メガホン。「ヤクザもの」で監督生活をスタートさせたが、70年代以降は幅広いジャンルで名作を送り出し、97年には「北京原人 Who are you?」など個性的な作品でも知られた。遺作は2010年「桜田門外ノ変」だった。

 昭和を代表する監督の1人として、数々の作品を世の中に送り出してきた佐藤さんが、静かに世を去っていた。関係者によると約3年前より消化器系疾患の診断を受けたが、手術などの治療を拒否。普通の生活を続けることを選んだ。1月19日にもマージャンに興じるなど比較的元気な様子でマージャンの調子も良かったが、今月9日、家族に見守られる中、息を引き取った。16日に通夜、17日に告別式を終えた。長男・佐藤東弥(さとう・とうや)氏が喪主をつとめる中、本人の強い遺志で家族だけで営まれた。

 佐藤さんは東映入社6年目の1962年「陸軍残虐物語」で監督デビュー。ブルーリボン賞新人賞を受賞し、若いころから注目された。その後しばらくは、やくざ映画を中心に撮っていたが、フリーに転じた73年以降、ジャンルに捕らわれない作品を生み出し、一気に才能が開花した。

 中でも、伝説的な作品が高倉健さん主演で75年に公開された「新幹線大爆破」。国鉄(現JR)の許可なく撮影され、当時、東映の社長だった故・岡田茂さんの「日本にもパニック映画を」の指揮で製作された。公開当時は興行的ヒットには至らなかったが、輸出された海外で認められ、キアヌ・リーブスが主演して大ヒットした「スピード」のモチーフとなり、日本でも評価も改められた。

 一方で73年、さいとう・たかをさん原作のマンガ「ゴルゴ13」を高倉健さん主演で実写化。97年「北京原人―」はDNA操作で現代によみがえった北京原人の姿を描く奇抜で斬新な内容だった。

 21世紀に入っても製作の意欲は衰えず、05年「男たちの大和―」は同年の邦画興収1位を獲得。デビュー作以来、42年ぶりに獲得したブルーリボン賞(監督賞)の受賞インタビューでは「合理化できない手作りのメディアが映画。この仕事を選んで、本当に良かったと思う」も話していた。 

 ◆佐藤 純彌(さとう・じゅんや)1932年11月6日、東京都生まれ。56年、東大文学部卒業後、東映に入社。今井正、伊藤大輔監督らにつき62年「陸軍残虐物語」で監督デビュー。73年フリーとなる。82年「未完の対局」はモントリオール世界映画祭でグランプリを獲得。88年「敦煌」で日本アカデミー賞最優秀作品賞、監督賞を受賞。テレビドラマも手掛けており、代表作は「キイハンター」「Gメン75」など。08年紫綬褒章受章。

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