学業とスポーツの両立が魅力の大学準硬式野球 

スポーツ報知
熱戦が続く東京六大学準硬式リーグ。ひたむきな全力プレーは硬式と変わらない

 高校野球は現在、各地で春季大会が真っ盛り。3年生は必死に白球を追いかけると同時に、卒業後の進路も考え始める時期です。「大学でも野球を続けたいけど、バイトや勉強も頑張りたい」なんて思っているキミ。準硬式野球はいかがですか? 今週は意外と知られていない大学準硬式野球の世界に迫ります。

 準硬式野球。略して「ジュンコウ」。硬式でもなければ、軟式でもない。正直、ビミョウな印象は否めない。だが、大学においては全日本大学準硬式野球連盟に284校が加盟し、登録選手は1万906人に上る。全日本大学野球連盟に加盟している硬式野球部が381校、登録選手が2万8998人(いずれも2017年度)であることと比べても、決して少なくない数字だ。

 準硬式野球の魅力について、関東地区大学準硬式野球連盟の長島幸雄理事長(64)は言う。

 「学業とスポーツを両立できるというのが最大のメリットです。教職を取って、高校野球の指導者になりたいという学生もいるし、大学で野球をしたいけど、軟式のサークルよりは本格的にプレーできる準硬式を選ぶという学生もいます」

 全国には9地区(北海道、東北、北信越、関東、東海、関西、中国、四国、九州)の連盟があり、関東地区には5リーグ(東京六大学、東都大学、神奈川、北関東、新関東)が属している。毎年8月に行われる全日本大学準硬式野球選手権大会(今年は静岡・浜松などで開催)で、大学日本一の座を争っている。

 近年では、中大の実績が群を抜いている。昨年は決勝で同大に屈したものの、通算12度の優勝は全国最多。セレクションを経て入学してくる選手の出身校は、報徳学園、常総学院、浦和学院、健大高崎、静岡、花巻東といった全国の強豪校がズラリと並ぶ。そのほか、法大や明大あたりにもスポーツ推薦で入学した甲子園経験者が名を連ねている。

 また、野球を通じた国際交流にも積極的だ。同大会の優秀選手で構成される選抜チームが3年に1度、海外遠征(昨年はオーストラリア)を行っているほか、東都大学連盟が独自に選抜チームを編成し、16年からインドネシアに遠征している。

 長島理事長は「現地のクラブチームと親善試合を行ったほか、野球を知らない人たちに、こうやって投げて、打つ野球というゲームがあるんだよというところから教えたりもします。野球を通じて国際感覚を養うことができるし、野球の普及・振興活動にもつながる。これは、硬式野球ではなかなかできない経験ではないかと思っています」と説明。他連盟からの問い合わせも多く、この活動が広がっていく可能性は大いにある。

 また、学生がリーグの運営などに積極的に携わっているのも準硬式野球の大きな特徴だ。関東地区連盟で言えば、10人の学生委員から成る「学生委員会」という組織が、70校以上が出場する関東大会の運営や交通費の管理、使用球場の確保などを担っている。そのほか、審判も球審以外は現役部員が務めている。

 準硬式野球を通じ、自らを研さんした学生の就職先は、そうそうたるところばかり。例えば、能代商(秋田)のエースとして10、11年夏と甲子園に2度出場した保坂祐樹さん(24)は、中大でプレーした後、秋田県庁に入庁。また、日本テレビの梅澤廉アナウンサー(25)は慶大準硬式野球部OBだ。

 長島理事長は「高校までの野球人口を考えると、大学で硬式野球をやるのは一握りだけ。小さい頃からやってきた野球を続けたいのであれば、準硬式という道もあるんだよと言いたいです。文武両道ができるし、4年間でみんな立派に巣立っていく。ぜひ参加していただきたいです」と、高校球児に呼びかけた。

 ◆使用球 コルクの粉末と樹脂を混ぜ合わせてできた芯に糸を巻きつけ、表面を天然ゴムで覆っている。見た目は軟球で中身は硬球といったイメージで、直径71.5~72.5ミリ、141.2~144.8グラムの重さはほぼ硬球と同じ。軟式H号、トップボールとも呼ばれる。硬球に比べて摩擦抵抗が大きいので、内野ゴロと外野フライが若干失速しやすい傾向にある。多くの選手が硬式用の金属バットを使用する。

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