横浜商大・佐々木正雄監督が今秋限りで勇退…後任に井樋助監督

スポーツ報知
今秋限りでの勇退を発表した横浜商大・佐々木監督(左)は、後を託す井樋助監督と握手

 神奈川大学リーグ・横浜商大の佐々木正雄監督(69)が19日、今秋限りで勇退することを表明した。後任には井樋(いび)秀則助監督(56)が昇格し、佐々木監督は総監督としてチームを支えていく。

 84年に就任してから35年目。神奈川商大を一代で全国区に育て上げた名監督がユニホームを脱ぐ決断を下した。佐々木監督はこの日、「この秋のリーグ戦終了後に退任します。その後は井樋に監督をしていただきます」と話し、コーチ、助監督として30年以上、自身を支えてきた井樋助監督に後を託すことを明かした。

 苦しい決断だった。かねて20年の東京五輪までユニホームを着続けたいとの意向を周囲に明かしていたが、情熱的な指導で酷使し続けていた肉体が悲鳴を上げた。昨年12月には、右股関節の手術を受けて約1か月の入院生活も経験。年明けに退院すると、真っ先に現場に復帰したが、完全復活とはいかなかった。

 ノックを打つこともできず、試合中もベンチに座ったまま。ナインを鼓舞することもままならず、焦燥感ばかりが募った。今春のリーグ戦は10戦全敗で創部史上初の最下位に。入れ替え戦では東京工芸大に連勝して1部残留を決めたが、心にひっかかるものがあった。

 「ノックを通じて、選手とボールで会話ができない」―。

 もともと、心と心をぶつけ合う情熱的な指導をモットーとしてきた。野球の技術以外にも、グラウンドを一歩離れれば、親代わりとして私生活も厳しく指導してきた。プロ入りした教え子は阪神・岩貞、山崎憲、楽天・西宮ら9人を数える名伯楽にとって、そこに生じてしまった“距離”を許すことはできなかった。

 一方で、井樋助監督にバトンを渡すのは既定路線だった。現在と指導方針が大きく変わることなく再スタートが切れる井樋体制は、大きなメリットだ。「選手たちにとっては、井樋が監督になって新しいスタートを切った方がいい」とうなずいた。

 これまで、リーグ優勝は6度。関東学院大、神奈川大の2強が立ちはだかり、最近は桐蔭横浜大の台頭もあったが、決して強豪と呼べる成績ではない。それでも、親分肌で人望が厚く、全日本大学野球連盟の監督会で会長も任された。監督生活を振り返り、「野球がうまい、ヘタじゃなく、野球を通して人間として育っていってくれたヤツが相当数いる。それが一番の励みになったね」と遠くに目をやった。

 今夏にはノックも再開する予定。「まだ終わりじゃないからね」。有終の美を飾るべく、名物監督が最後のシーズンに執念を燃やす。

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