•  スポーツ報知のWebサイト限定コラムがスタートしました。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

スポーツ×データ…野球&サッカー地上波中継での新しい試み

2017年7月16日10時0分  スポーツ報知
  • ナゴヤドームのバックネット裏5階貴賓席に設置された「トラックマン」のアンテナ

 先週末の14日、15日のスポーツ中継は、最新技術で得られたデータで選手や試合を解析する新しい試みが目立った。プロ野球ではマイナビオールスターゲーム2017第1戦(テレビ朝日系)。サッカーは明治安田生命Jリーグワールドチャレンジ 浦和―ドルトムント(フジテレビ系)。CS放送などで常時追っかけているコアなファンには見慣れたデータでも、ライト層は「なんだこれ?」と思ったかもしれない。

 プロ野球中継では、投手のボール回転数や打者の打球速度、飛距離などを数値化。サッカー中継では、全選手の位置をリアルタイムで掲出して、画面に映らないプレーヤーの動きも分かるようにしていた。

 データの伝え方は、試行錯誤の段階といえる。例えば野球ボールの回転数。物理学の知識があれば、回転軸が真横で進行方向と逆方向に回転する場合、回転数が増える=ホップする(マグヌス効果)ことは分かる。

 しかしこの説明ですら、文字や話し言葉だけで説明しようとするとなかなか困難で、視聴者全員が理解できるとは限らない。そして「よくわからん」となった時点で「もうやめてくれ」となってしまう可能性が高い。実際に中継中のSNSでは、データを取り上げた解説に賛否両論の声があふれていた。実際「2400回転/分」と言われメジャー選手と比較されても、突然聞かされた視聴者は「それがどうすごいのか」実感が湧かないのは仕方ないだろう。

 元メジャーリーガーの石井一久氏が第1戦の中継中に、ツイッターで「回転数の話より、千賀と鈴木誠也の対決みたい」とつぶやいた通り、試合の邪魔をするようでは元も子もない。単に数字を並べるだけでなく、イラストやグラフによる可視化と比較が必要になるだろう。「トップレベルの選手がいかにすごいか」客観的なデータで示すことができるよう、制作側のこれからの工夫に期待したい。

 また我々のような新聞などの紙メディアでは固定のイラストしか用いることができないが、WEBであれば分かりやすい解説記事を「テキスト」+「写真」+「動く可視化データ」を作ることができる。こちらも研究、試行錯誤を続けていく必要がある。

 そして何より、分かりやすく正しく解説できる人が圧倒的に不足している。アナリストですら人手不足の現状だけに仕方ないかも知れないが、メディア側も独自に勉強していく必要がある。そうすれば、いずれ「データの意味」が分かる視聴者も増えてきて、一般化する日が来るだろう。

 それだけに多くの人が注目する地上波中継の試合で挑戦した今回の2放送局の意気込みを高く評価したい。特に球宴第1戦が行われたナゴヤドームに設置されたデータ取得用のトラッキングシステム「トラックマン」は、この日のために特別に貴賓席にアンテナが設置されたものだった。「根性」「努力」「美談」だけではない、新しいスポーツの伝え方をメディアは模索する時代となるだろう。(記者コラム・コンテンツ編集部 田中孝憲 @CFgmb)

  • 楽天SocialNewsに投稿!
コラム
今日のスポーツ報知(東京版)