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野球道具の盗難事件に胸が痛む…ボールに込められた球児の思いを知ってほしい

2017年10月19日14時0分  スポーツ報知
  • 玄誓寺の上本住職(後列右)と合掌して写真に収まる鹿追ナイン

 胸が痛んだ。今年7月以降、埼玉など関東圏の高校で、硬式野球部のボールなどが相次いで盗まれた。高校最後の夏に向け、汗を流していたナインの頑張りに水を差す事件。道具を何よりも大事にしている球児たちを知っているからこそ、ニュースを聞いて心苦しかった。

 北海道の鹿追高校のこと。今年8月、秋季大会前に取材で伺った。道東の帯広市内から車で約45分。林道を抜けると、人口5570人の鹿追町に到着する。町唯一の高校で野球部員はわずか10人。打撃練習を終えると、全員での球拾いが始まる。少ない人数だけにお節介かなと思いながら、私もボール拾いに加わった。

 外野に転々とした球を拾い、気が付いた。皮が今にも剥がれそうなボールに、ビニールテープで補修したが、またも剥がれかけているものも…。これでは打球も飛ばないだろうと思い、私は選手に訪ねるとこう答えた。「捨てられない。これもまた直して使います」。横では、女子マネジャーが補修する姿もあった。

 大切なボールだった。野球部は毎年、近隣の「玄誓寺」から硬球2ダースを寄付してもらってきた。硬球は1ダースでおよそ1万2000円ほどで、決して安価なものではない。福川和彦監督(38)も「部費のほとんどはボールに割かれる。本当に助かってきた」。限られた部費でやりくりする公立校にとっては、大きな支えとなってきた。

 今では10年以上も続くという玄誓寺からの寄贈。きっかけは住職の上本周司さん(61)が、保護司の活動を行っていたことからだった。当時、犯罪を犯した未成年の男性を保護観察期間中に保護司として支えた。そして、同期間最終日に青年から「何かに使ってほしい」と、働いて貯めた5000円を手渡されたという。

 「その子は今まで野球を頑張ってきたと聞いた。なら、このお金は、今、頑張っている球児のために使おうと思って」と上本さんは振り返る。選手たちがボールを大事にする理由が分かった。奇しくも、前述の野球道具の盗難事件は、いずれも元球児の犯行だったという。更生を願うばかりだ。(記者コラム・清藤 駿太)

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