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オリックス21歳・佐野、忘れられない“お寿司の味”胸に内野転向に挑む

2017年10月25日11時0分  スポーツ報知
  • 秋季練習で、ロングティー打撃で汗を流す佐野皓大

 ポストシーズン進出を逃し、既に来季に向けて動き出しているオリックスで、この秋新たな挑戦を始めた若者がいる。21歳の佐野皓大だ。プロに入って3年間投手として戦ってきたが、1軍登板はなく来季から内野手に転向することが決まった。大阪・舞洲(まいしま)で行われている秋季練習では、手のひらにマメをたくさんつくりながらもバットを振り込む毎日。そんな佐野の支えになっているのが、今でも忘れられないある“お寿司の味”だ。

 今春のキャンプ、投手・佐野は少ないチャンスをものにしようとしていた。キャンプの中盤、紅白戦で急きょ巡ってきた登板機会。落ち着いた投球で1軍の選手を相手に1回を3人で斬って取った。「逃げて打ち取るより、(サインに)首を振ってでも真っすぐでいって打たれた方がいい」と真っ向勝負を挑んだ若者に対し、福良監督も「登板予定がなかったのに、結果を出した。次もチャンスをあげたい」と話していた。そして迎えた次の練習試合。広島との一戦で、佐野は本塁打を打たれた。1軍の洗礼を浴び落ち込む21歳のもとに、その夜思わぬ贈り物が届けられた。

 宿舎の部屋をノックする音が聞こえ、出てみると佐竹2軍ヘッドコーチが立っていた。「これ、食べろ」。手渡されたのはパックに入ったお寿司。突然の大好物のプレゼントに佐野は驚いたが、もっと驚いたのはその送り主を知った時だ。なんと福良監督からだった。宮崎出身の指揮官は、佐野の故郷である大分で社会人時代を過ごした。その縁もあって、入団時から何かと気にかけてくれていたという。「そりゃうれしいですよね。10貫ぐらい入っていて、高級そうな感じでした。それまでウニがあんまり得意じゃなかったんですけど、そこで食べて好きになったぐらいです」。また次頑張ればいい、好きな物を食べて切り替えろ―。味もさることながら、指揮官の心遣いが何より身に染みた。

 それ以来、佐野の中にある気持ちが芽生えた。「監督の期待に応えたいんです。これまで結果を残せなかったから…」。大分高時代は最速152キロの直球を操り、エースとして夏の甲子園に出場。投手として申し分のない経歴を歩んできたが、プロ入り後は満足に投げることができず苦しんだ。それだけに今回の野手転向に懸ける思いは強い。「プロで1日でも長くやりたいんです」。打撃も守備も今はまだ発展途上だが、下山1軍打撃コーチは「天性の体の柔らかさがある。(巨人の)坂本のようなね」と身体能力の高さを感じている様子。佐野自身も目指す選手に阪神・糸井を挙げ、野手として羽ばたける日を目指している。

 182センチ、72キロの体格は、福良監督や西村ヘッドコーチから「ガリガリやん」といじられることも多い。そんな現状を打破すべく、現在まずは3キロ増やすことを目標に、練習の合間に食べるおにぎりに加えて、プロテインも1日5回以上摂取。さらには寮での夕食の後に夜食も食べるなど、絶賛増量中だ。もともと太りにくい体だというが「でかくしないと通用しないですから」と憧れの小谷野にも意見を聞き、必死に取り組んでいる。

 うれしかったお寿司の味。グラウンドに立ち、勝利に貢献することで、あのときの恩返しを必ずしてみせる。(記者コラム オリックス担当・筒井 琴美)

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