•  スポーツ報知のWebサイト限定コラムがスタートしました。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

アリゾナキャンプでまじまじと感じた、米野球文化の底辺の広さ

2018年2月6日16時0分  スポーツ報知
  • 好投した女性投手のTジョーンズさん(右から2人目=カメラ・泉 貫太)
  • 「ファンタジーキャンプ」の会場。実際にプロキャンプが行われるグラウンドで一般の人たちが野球を行っていた

 野球の国アメリカを象徴するイベントに遭遇した。北海道日本ハムファイターズのアリゾナキャンプを取材するため、極寒の東京から米国アリゾナ州へ渡米してから4日目の夜。現地時間で1月30日。チーム取材を終え、キャンプ施設近隣のバイキング形式サラダ店で食事し、車で帰路につこうとした矢先、さきほどまで日本ハムが春季キャンプ前の自主トレを行っていたソルトリバーフィールズ・アットトーキングスティックの方向に煌々と照明がともっているのが見えた。

 目を凝らし、耳を澄ませると、芝生のグラウンドでは木製バットで野球の試合が行われている様子。しかもみんなそろいのユニフォーム姿だ。一瞬、マイナーリーグでもやっているのかと思ったが、メジャーリーグのキャンプも始まっていいない時期。そんなはずはない。地元のリトルリーグ?しかし時間は平日の夜。それもない。じゃあいったい何なのか。興味が沸いたので近寄ってみた。

 入り口では、警備員が先に来たお客さんらしき人に説明をしサインを求めている。観戦は有料なのか。それとも関係者のみなのか。自分の番が来たので「what is this?」と中学生英語丸出しで聞いてみると、警備員のおじさんは「コロラド・ロッキーズのファンタジーキャンプを開催中だ」と教えてくれた(正式には、そう聞こえた)。見ると入口横にはロッキーズののぼりが立っている。ちなみにこのソルトリバーフィールズ・アットトーキングスティックという場所は、ナショナルリーグ西地区のアリゾナ・ダイヤモンドバックス(Dバックス)とコロラド・ロッキーズの共同キャンプ地になっており、メイン球場を中心に2チーム分の施設が展開、グラウンドは数えてみただけでも14面ある。日本ハムはDバックス側の施設を使用しており、こちらはロッキーズ側になる。

 グラウンドでは、すでに野球の試合がそれぞれに始まっていた。おじさんは「見たいなら、ここにサインをくれ」とニッコリ。読むとファウルボールにあたってけがをした時などに備えた承諾書だった。名前と日付を記すと、手首にカラーテープを巻いてくれた。「enjoy!」。おじさんは笑顔で中へと送り出してくれた。

 3面あるグラウンドを順々に回ってみたが、知っていたり、見たことのある選手は皆無。しかし見る限りみんな本家ロッキーズと同じの、ネームと背番号入りのホーム、またはビジターのユニフォームに身を包んで野球をやっている。しかも年齢が様々。60歳はゆうに回っているであろう白髪のおじいさんが体がよじれんばかりの空振りをしたかと思うと、別のグラウンドでは金髪の長髪をなびかせた女性投手が好投していた。背中のネームはTジョーンズ。相手のおじさん投手が前のイニングで炎上したのとは対照的に、1球1球丁寧に、制球よく打たせて取るピッチングを展開。2イニングを無失点に抑える見事な投球に、見ていたこちらも思わず「GREAT PITCH!」と声をかけてしまった。これではただの奇妙な東洋人である。

 ちょうど取材帰りだったこともあり、その後はカメラで撮影しながらグラウンド周りを回った。するとベンチの中から外国人カメラマンが近寄ってきた。「撮影禁止だったか」。一瞬不安に思ったが、名刺を出して素性を明かすと、先方はロッキーズのチームフォトグラファーだという。マット・ダークセンさん。眼鏡に半パン姿で忙しそうに選手たちの写真を撮影していたお兄さんが、このイベント「ファンタジーキャンプ」の仕組みを教えてくれた。参加しているのは20代から60代までのロッキーズファンの一般人。有料でイベントにエントリーした後は、ドラフト会議を開いて参加者だけのチームをいくつか編成。そこにかつてロッキーズでプレーした経験をもつOB、あるいはマイナーの現役コーチなどが監督、コーチとして加わり、練習の指導から試合の指揮を担当。本家と同じ名前入りのユニフォームを着て、実際のプロキャンプが行われるグラウンド使って試合を行い、メイン球場で決勝。優勝チームまで決めるのだそうだ。プロキャンプが始まるまでの間、キャンプ地の地元ファンに本格的な野球体験の場を提供し、チームを身近に感じてもらおうというイベントと解釈した。ちなみに、日本ハム側のグラウンドでもDバックスの同様のイベントが行われているという。

 この日は3面のグランドを使って6チームが参加。7イニング制の試合が3試合行われた。自分にとっても人生で最も早い時期に行った野球の試合取材!?になったといえるか。日本でも公式戦終了後のグラウンドでファン同士による試合が行われたり、ノック体験が開催されているのをたびたび見たことがある。ただ、プロのコーチの手ほどきを受けているせいか、今回観戦した一般の方々のプレーレベルはなかなかのもの。おじいさんでも全力疾走を見せるし、登板して打たれまくれば、容赦なく監督がマウンドまで来て降板を命じる。ゲームが大崩れすることもなかったし、見ていて間延びすることは一切なかった。街に出ればフツーな感じの人々による野球への本気度の高さや熱さは、まさにベースボールを国技とする国。アメリカの底辺の広さをまじまじと感じさせてくれた。(記者コラム・写真部 泉貫太)

  • 楽天SocialNewsに投稿!
コラム
今日のスポーツ報知(東京版)
報知ブログ(最新更新分)一覧へ