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もしソフトバンク・達川ヘッドの現役時代にリクエストがあったなら…

2018年6月13日16時0分  スポーツ報知
  • 現役時代、数々の“名演技”を披露したソフトバンク・達川ヘッドコーチ

 今季から導入されたリクエスト制度。正確な映像で、判定が覆ることも多く、賛否はあるものの、プロ野球の新たな見所として定着しつつある。

 そこで、ふと考えてしまった。ソフトバンク・達川ヘッドコーチのことだ。広島での現役時代、内角への際どい球を数々の“名演技”でデッドボールとアピールし、何度も成功させた姿は、プロ野球ファンならおなじみだろう。

 阪神・金本監督も、5月8日の巨人戦(東京D)で高山の死球を巡ってリクエストを要求し成功。試合後、「達川さんだったら行ってないかも」と笑っていたほどだ。

 今年からソフトバンク、中日を担当している立場を利用して、さっそく達川ヘッドに直撃してみた。返ってきた言葉は、実にシンプルだった。

 「もしあったら、わしは今ここにはおらんのう。終わりじゃ」。

 はぐらかすことなく、真剣な顔でそう答えてくれた。話はそれだけにとどまらない。

 「そりゃあ、必死だったからのう。今は何でもビデオ社会。一発で正確にわかってしまう。選手も納得できるし、わかりやすい。昔は空タッチでアウトになったり、その逆もあったわけで。どっちが得とかは、なかったように思うがの。そりゃあ、今の方がいいんじゃないか。(映像の)角度にもよるがのう」

 1980~90年代前半の赤ヘル黄金期を支えた正捕手として、当時を懐かしみながら分析してくれた。

 また、かつて広島で指揮官を務めた経験をもとに、鋭い指摘もしてくれた。

 「監督の退場とかはなくなるじゃろう。カッとなって(グラウンドに)出て行くより、リクエストをすることになる。今年は(監督の)退場はゼロになるんじゃない?」

 実際、今季ここまで12球団の監督で退場者はいない。また選手でも、阪神・メッセンジャーが、4月12日の広島戦(甲子園)で審判に暴言を吐いて退場になった程度。その他は危険球によるものだ。

 最後も同じ言葉で締めてくれた。

 「もしあったら、わしは今ここにはおらん。終わりじゃ。ま、そういうことよ」

 念のため、達川ヘッドの現役時代の主な実績を記しておこう。プロ15年で3636打数895安打の打率2割4分6厘、51本塁打、358打点、62死球。ベストナイン3回、ゴールデングラブ3回、オールスター出場7回。通算盗塁阻止率は3割6分6厘を誇る。

 その他、“ささやき戦術”や巧みな配球など、数字には現れない部分でも広島投手王国をリード。5回のリーグ優勝、3回の日本一に大きく貢献した。広島商では73年センバツ準優勝、同年夏は日本一と、アマ時代の戦績も輝かしい。

 もうお分かりだろう。たとえ当時リクエスト制度があったとしても、達川ヘッドの実績は全く変わらないことを。だからこそ、死球を主張するあの「珍プレー」の映像は、時代が生んだ貴重なものなんだとかみしめながら、今後も思う存分爆笑していこうと思う。

(記者コラム・嶋田 直人)

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