進学校・膳所、「野球に興味なし」データ解析部員とつかんだ59年ぶりセンバツ出場

スポーツ報知
打球傾向のデータを見る膳所の平井崇博(左)と新井将太

 第90回センバツ高校野球記念大会(3月23日から13日間・甲子園)の出場36校が26日、発表された。滋賀の全国屈指進学校・膳所(ぜぜ)は21世紀枠で59年ぶりの出場。近江、彦根東と合わせた同一県からの3校出場は、2001年の茨城以来17年ぶりとなった。組み合わせ抽選会は3月16日に行われる。

 諦めかけていた吉報が、膳所ナインに届いた。滋賀からは一般選考で近江と彦根東の選出が有力視され、「同一都道府県から3校は選出しない」との内規によって落選―との見方が強かった。だが、結果はサプライズ当選。高野連関係者は「内規は一般枠に限定したもの」と説明。59年ぶりの切符に、上品(うえしな)充朗監督(48)は「今までウチがやってきた取り組みが認められてうれしいし、光栄です」と表情を崩した。

 1898年の創立で、120周年を迎えた伝統校。偏差値は軽く70を超え、昨年度は東大に3人、京大には66人もの合格者を輩出した全国有数の公立進学校でもある。その頭脳を生かした特色が最大限に評価され、21世紀枠の最後のイスに滑り込んだ。

 昨春、2人の異色部員が入部した。データ班として入部した「野球に興味がない」野津風太君と“カープ女子”の高見遥香さん(ともに1年)だ。チーム内では外野手扱いだが、ともに練習に参加することはなく、ユニホームもない。公式戦などで相手の打球傾向などを調べ、グラウンド全体を198分割した図に書く。パワーポイントで作った資料を見て、野手は打者ごとに守備位置を決める。「能力が低い子が多いので、打球が正面に飛んでくるところに守れば、捕れる可能性が高くなる」と、指揮官が発想を転換したのがきっかけだ。ナインはそのデータを基に外野2人などの大胆なシフトを敷き、昨秋の県大会で8強入りした。

 この日の21世紀枠特別選考委員会では、データを管理する、野球未経験の専属部員を置く独自の取り組みを高く評価。「女子生徒が野球にどう絡んでいけるか。膳所はマネジャーだけでなく、いろいろな関わり方があることを証明している」といった意見も出たという。制服姿でナインと喜びを分かち合った高見さんは「野球が好きな女の子たちに、マネジャー以外の新しい関わり方を伝えたい」と目を輝かせた。

 甲子園には過去、春夏通じて5度出場しているが、いずれも初戦敗退。今回もズバ抜けた選手はいない。チーム打率2割4分5厘は出場36校中、最低だ。それでも「伝統のユニホームを着て、先輩たちと一緒に戦いたい」と石川唯斗主将(2年)。明晰(めいせき)な頭脳を味方につけて、湖国の秀才軍団が“6度目の正直”で初勝利を目指す。

 ◆同一府県勢の3校以上出場 今回の滋賀が20度目で、1948年の学制改革以降では88年の大阪、95年の兵庫、01年の茨城に次いで4度目。戦前は近畿、東海地方を中心に出場校が選出されていたこともあり、1931年の和歌山、37年の愛知から4校が出場するなど、計14度の3校以上出場があった。戦後初の開催となった47年にも京都と和歌山から3校が出場した。

 ◆近江はバッテリーの1年生がカギ

 近江は昨秋の近畿大会で4強入りし、3年ぶりの出場が決まった。多賀章仁監督(58)が期待するのは、林優樹と有馬諒の1年生バッテリー。「林の投球がどこまで通用するかがカギ。有馬は肩が強く、捕手としての感性が素晴らしい」と絶賛。2003年春を最後に8強入りがなく、有馬は「ベスト8以上が目標。近畿大会で負けた大阪桐蔭に勝ちたい」と意気込んだ。

 ◆進学校・彦根東は夏春連続出場

 県内屈指の進学校・彦根東は初の2季連続出場となった。昨夏、同校の甲子園初勝利に導いた増居翔太と、2回戦で先発した原功征(ともに2年)の両左腕が健在。理系で京大を志望するエース増居は「1勝では満足しない、ぐらいの気持ちでいきたい」と、きっぱり。緊張による腹痛を防ぐため、試合前に必ず正露丸を飲む大黒柱が、センバツ初勝利に導く。

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