【センバツ】膳所の「データシフト」分析通りに打球が飛んだ! 記録員も混乱、三ゴロを遊ゴロに

スポーツ報知
2回無死、日本航空石川・長谷川のゴロを捕球し一塁へ送球する膳所・有川(カメラ・渡辺 了文)

◆第90回センバツ高校野球大会第2日 ▽2回戦 日本航空石川(石川)10―0膳所(滋賀)(24日・甲子園)

 21世紀枠で59年ぶりに出場した膳所(ぜぜ、滋賀)は、話題のデータ班が相手の打球傾向を調べ、大胆過ぎる守備位置を敷く“IT野球”で健闘した。だが、日本航空石川の強打にシフトを破られて大敗し、甲子園初勝利はならなかった。日大三(東京)は、21世紀枠で初出場の由利工(秋田)を下し、春夏通算50勝目。静岡は春翔一朗投手(3年)が、金属バット導入以降3人目となる奪三振ゼロでの完封で、駒大苫小牧(北海道)に快勝した。

 データ班の分析が的中した…はずだった。0―0の4回1死一塁、日本航空石川の4番を迎え、膳所は大胆な“上田シフト”を敷いた。遊撃手が二塁右に、左翼手は左中間、右翼手は右中間に位置した。大飛球は、左翼手の星田昌慶の近くに飛んだ。だが、グラブに当てながらも捕球できなかった。「今まで見たことがないぐらい速い打球で対応できなかった」。先制の適時二塁打にしたことを悔やんだ。

 6回無死一塁でも打球方向はデータ通りだった。狭めていた一、二塁間へのゴロ。だが、打球スピードが速く、右前に抜ける適時二塁打となった。

 ただ、“IT野球”は甲子園でも通用することを示した。データ班が、昨秋の石川県大会を含む約10試合分の相手の試合映像を入手。その分析に基づいて、野手は打者に応じて守備位置を変えた。そこに多くの打球が飛んだ。3回には三遊間に位置した三塁・平井崇博が、通常なら遊ゴロの打球を三ゴロにした。3回まで1安打無失点。6回1死でも二塁ベース寄りのゴロを三塁手が処理。公式記録員も「63」(遊ゴロ)と記載ミスしたほどだった。

 日本航空石川の中村隆監督(33)も「メジャーリーグぐらい(守備位置が)動いていた。(データは)すごい。『負けたな』と。(4回の)上田の当たりも捕られていたら、もっと苦しい展開になった」とたじろがせた。

 データ班の高見遥香とともにアルプス席で応援した野津風太(ともに2年)は「序盤の方の長打はデータ通り防げていた。データの有効性は、ある程度は示せた」と手応えを示した。一方で、三塁手の平井が「データははまったけど、処理できる能力が足りない」と反省したように、選手は技術アップの必要性を痛感した。

 4安打完封負けで、春夏通じて6度目の出場で4度目の無得点となった。元膳所監督で日本高野連の西岡宏堂副会長(74)は「次は攻撃のデータ野球をつくりなさい!」と上品充朗監督(48)にハッパをかけた。独創的な野球で甲子園を驚かせた伝統校が、高校野球に新しい風を吹かせていく。

(伊井 亮一)

 ◆膳所のデータ班 データ分析・管理を専門的に扱う部員を昨年4月に募集。野球経験のない男女一人ずつが入部した。ユニホームもなく、練習には参加しない。パソコンを活用して、対戦校の打球方向の傾向などを分析し、選手に伝える。そのデータ野球で昨秋滋賀大会ベスト8。マネジャーでない女子部員が野球に関われていることも評価されて、21世紀枠で選出された。

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